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求人情報などに記載してある「社会保険完備」という言葉を正しく理解していますか?
社会保険とは何を指すのか、完備とはどういう状態なのか、意外と理解できていない方もいるのではないでしょうか。
企業で働く際には、さまざまなメリットを得られる社会保険についてきちんと知っておくことが大切です。本記事では、「社会保険完備とはどういう意味なのか」を解説し、社会保険の加入条件、アルバイト・アルバイトが加入するメリットなどについてお伝えします。
社会保険完備とは
「社会保険完備」とは、労働者が加入要件を満たせば、以下の4つすべての社会保険(※)に加入できることをいいます。
- 健康保険(※)
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災者災害補償保険(以下:労災保険)
加入する保険が健康保険と労災保険のみの場合など、4つの社会保険すべてに加入できない場合は、「完備」という言葉は使用されません。
※「健康保険」には「介護保険」も含まれているため、健康保険が完備されている場合は介護保険へも自動加入となります。
そもそも社会保険とは?
そもそも社会保険とは、労働者を守るための必要最低限の社会保障制度の総称です。社会保険には条件があり、勤務先の規模によって加入が義務づけられています。各種保険の概要は、以下のとおりです。
種類 | 概要 |
---|---|
健康保険 | 民間企業の従業員とその家族が加入する医療保険 |
厚生年金保険 | 厚生年金保険適用の企業に勤める従業員や公務員が加入する年金制度 |
雇用保険 | 失業時や就労困難時に給付金や支援を受けるための保険 |
労災保険 | 業務中や通院中の怪我・病気などに対して保証を受けるための保険 |
介護保険 | 介護時に給付金などのサービスを受けるための保険(40歳以上) |
社会保険に加入するためには、事業所(企業)と従業員それぞれに対して、定められた条件を満たす必要があります。
社会保険の適用対象となる事業所
社会保険の適用対象となる事業所は、「適用事業所」といいます。適用事業所には、事業主や従業員の意思にかかわらず、健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられる「強制適用事業所」と、強制適用事業所に該当しない「任意適用事業所」の2種類があります。
強制適用事業所 | 常時5人以上の従業員を有する事業所および常時従業員を1人以上有する国・地方公共団体、法人の事業所 |
任意適用事業所 | 半数以上の従業員が適用事業所になることに同意し、事業主が年金事務所での申請を済ませている事業所 |
強制適用事業所には、飲食店、理美容業、農林漁業などは含まれません。任意適用事業所は、健康保険と厚生年金保険の両方ではなく、どちらか一方にだけ加入することも可能です。
また、任意適用事業所の場合、事業所側は社会保険に加入してる従業員(被保険者)の4分の3以上の同意を得られれば、適用事業所から脱退することができます。
社会保険の加入条件
社会保険には、それぞれ加入条件があります。以下、詳しく説明します。
健康保険・厚生年金保険
健康保険と厚生年金保険の加入条件は、以下のとおりです。
【健康保険・厚生年金保険の加入条件】
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雇用保険
雇用保険は、以下の条件を満たす場合に加入します。
【雇用保険の加入条件】
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▼雇用保険についてもっと知りたい方はこちら
労災保険
労災保険は、雇用されているすべての労働者が加入し、正規雇用だけでなく、パート・アルバイトなど非正規雇用であっても適用されます。
▼労災保険について もっと知りたい方はこちら
パート・アルバイトが社会保険に加入するには?
パート・アルバイトのような非正規雇用が社会保険に加入するためには、以下のどちらかの条件を満たすことが必要です。
【雇用保険の加入条件】
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注意したいのは、正社員の4分の3以上の勤務時間や日数を満たしている場合であっても、契約期間が2か月以内の場合は、契約が「更新される」または「更新される場合がある」ことが、就業規則や雇用契約書などに明示されていなければなりません。そのため、必ず条件を確認することが大切になります。
また、同様の雇用契約者が過去に2か月以上就業した実績がある場合も適用されます。これに加え、以下の5つの条件を満たすことで社会保険への加入が可能です。
【健康保険・厚生年金保険の加入条件】
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※2024年10月以降は、勤務先の従業員数が101名以上から51名以上に変更される見込みです。
先述したように、パートやアルバイトのような非正規雇用であっても条件を満たすことができれば、社会保障を得られ、安心して働けます。
ただし、年収によっては、家族の扶養から外れてしまい、手取りが大幅に減るケースもあります。求人を探す際には、「社会保険完備」の表記に注目し、自身が扶養内・扶養外のどちらで働きたいのかを考慮したうえで、勤務先を選択しましょう。
パート・アルバイトが社会保険に加入するメリット
パート・アルバイトが社会保険に加入するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 高齢や怪我などで働けなくなったときに給付金を受け取れる
- 老後に受け取れる年金額が増える
- 所得税や住民税などの税金が給与から天引きされるため、申告の手間が省ける
社会保険に加入することで、突発的な事態が起きたときや老後などの将来に対して、社会的な安心感を得られます。長期的な視点で考えると、経済的な安定を確保する大切な要素となるでしょう。
パート・アルバイトが社会保険に加入するデメリット
パート・アルバイトが社会保険に加入するデメリットは、社会保険料の控除で手取り額が減ることです。しかし、失業時に雇用保険から給付金が支給されることを踏まえると、大きなデメリットにはならないでしょう。
社会保険完備に関するよくある質問
最後に、社会保険完備に関するよくある質問にお答えします。
Q.社会保険完備と各種保険完備の違いは?
A.求人情報に記載されている「各種保険」は、社会保険と同じ意味合いを持ちます。「各種保険完備」と記載があれば、社会保険が完備されていると考えてよいでしょう。
Q.社会保険には何が含まれている?
A.社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」のことです。この5種類の保険は「広義の社会保険」と呼ばれており、このなかの健康保険・厚生年金保険・介護保険を「狭義の社会保険」、雇用保険・労災保険を「労働保険」といいます。
Q.社会保険に加入すると手取りはどうなる?
A.社会保険に加入すると、社会保険料が給与から天引きされます。そのため、手取り額は減りますが、退職時に雇用保険が受け取れるようになるほか、将来受け取れる年金額も増えるでしょう。
Q.社会保険に退職金制度は含まれる?
A.退職金制度とは、従業員が退職する際に会社からお金が支給される制度であり、公的な社会保険としては含まれません。
Q.社会保険に加入したくない場合は?
A.ここまで解説してきた加入条件を満たさなければ、社会保険に加入する義務はありません。例えば、月収を8.8万円未満におさえ、週の労働時間も20時間未満に調節すれば加入対象にはなりません。
まとめ
パート・アルバイトとして働く場合も、社会保険完備の企業に雇用されることで社会保障を得られ、将来的な収入の安定を確保することができます。社会保険完備とはどういう意味なのかを理解したうえで、安心して勤務できる職場を探すとよいでしょう。
- タイミーラボ編集部
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