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夜22時以降に働くと、深夜手当(深夜残業手当)として給料に反映されます。その割合は法律で決まっていますが、どのように深夜残業代が算出されるのでしょうか。
今回は、深夜手当の概要と計算方法、かんたんに計算できるツールなど、紹介していきます。
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深夜手当(深夜残業手当)とは?いくら割増されるの?
深夜手当(深夜残業手当)とは、深夜割増料金のことです。夜22時~翌朝5時の時間帯に働いた際、基本給に25%以上割増されて支払われます。「労働基準法第37条」で義務付けられており、全事業者が支払い対象です。
深夜手当の計算式は以下のようになります。例としてコンビニエンスストアで時給1,000円、夜22時~翌朝5時まで(休憩1時間を含む)労働をした場合と仮定しています。
1,000円(基本給)×1.25%(深夜割増)×6時間(休憩時間をのぞく)=7,500円 |
深夜勤務ができない条件とは
深夜に勤務できない年齢や状態も労働基準法で定められています。以下の条件のいずれかに該当する場合は、深夜勤務ができません。
- 満18歳未満の年少者(特例ありだが原則不可)
- 妊娠している者(労働者から申出があった場合)
満18歳未満の年少者については、高校3年生であっても18歳以上であれば深夜勤務が可能です。しかし、学業に支障が出たり校則で禁じられていたりすることがあるため、学校に確認が必要です。
夜勤手当とは 〜深夜手当と夜勤手当の違い〜
よく似た名前の制度に「夜勤手当」があります。夜勤手当は法律で定められたものではなく、この制度を置くかどうかは完全に事業者の任意です。そのため、夜勤手当がなくても法律違反ではありません。夜間に働く方に対して支給されるため、支払われる時間や金額も任意。会社の就業規則にある給与規定を確認しておくといいでしょう。
深夜手当 | 夜勤手当 | |
---|---|---|
労働基準法 | 規定あり | 規定なし |
手当額 | 基本給の25%割増 | 事業者の任意 |
課税 | 対象 | 対象 |
対象期間 | 夜22時~翌朝5時 | 事業者の任意 |
どちらも課税対象である点を除いて、性質が異なります。
なお、「夜勤手当が非課税」と聞いたことがある人もいるかもしれません、それは一部間違いです。正しくはよく似た制度である「当直(宿直・日直)」のことで、この手当の4,000円までが非課税となります。当直や宿直の場合、通常とは異なる労働を行うために支払われるので、夜勤と混同されがちです。通常の仕事内容がちがう場合は当直の手当になることを覚えておきましょう。
深夜手当の計算方法〜時給の場合〜
深夜手当の計算方法は、基本給で算出する場合と月給を日給に直した形で算出する場合で計算方法が異なります。基本給の計算方法が一般的です。
基本給 | 時給(1時間あたりの賃金)×割増率×時間 |
月給制 | (月給÷平均所定労働時間)×割増率×時間 |
具体的な金額を入れて計算してみましょう。基本給の条件は「深夜手当とは」で使用したコンビニエンスストアの例(時給1,000円、夜22時~翌朝5時まで(休憩1時間を含む))を使用します。月給制は基本給20万円でほかの手当はなし、1日の所定労働時間を8時間とし、年間所定休日が120日、深夜勤務が1日平均4時間と仮定します。
【計算例】
- 基本給での計算:1,000円×1.25×6時間=7,500円
- 月給制での計算:[200,000円÷{(365日-120日)×8時間÷12ヵ月}]×1.25×4時間=6,130円(少数第一位切り捨て)
所定労働時間が深夜の場合
所定労働時間が深夜の場合、時間内・時間外を問わず深夜手当の支払いが発生します。二交代制の夜勤が代表例です。
仮に時給1,200円で22時~翌日7時(休憩1時間を含む)の所定労働時間の場合、次のように計算します。
【計算例】
- 22時~翌日5時まで:1,200円×1.25×6時間=9,000円
5~7時まで:1,200円×2時間=2,400円
合計:9,000円+2,400円=11,400円
法定休日に深夜残業をした場合
法定休日に深夜残業した場合、深夜手当に加えて休日手当である35%が上乗せされます。つまり、基本給の60%を上乗せすることが可能です。
時給1,200円で、10時~深夜23時(休憩1時間を含む)まで労働した場合の計算式は以下のようになります。
【計算例】
- 10時~22時:1,200円×1.35(休日手当)×11時間=17,820円
22時~23時:1,200円×{1.25(深夜手当)+1.35(休日手当)}×1時間=1,920円
合計:17,820円+1,920円=19,740円
例えば金曜日に勤務をして残業時間が日をまたぎ、法定休日になった場合は、24時で法定外労働時間の計算が終了します。この場合、0時以降に休日手当+深夜手当の計算になり、5時以降は休日手当のみの加算です。
深夜手当を計算する際の注意点
深夜手当を計算する際に注意すべきパターンがあるため、気をつけるポイントを解説します。
条件が重なった場合の計算方法(残業手当と深夜残業手当)
「法定休日に深夜残業した場合」のように、条件が重なった場合はすべての割増率を合算して計算しましょう。休日手当以外のパターンでは、残業の割増賃金も該当します。
残業の割増賃金は25%であるため、深夜手当と条件が重なる場合は合計50%の割増です。このように、条件が重なる場合は別々に計算するのではなく、重なった条件すべてを合算して計算します。
たとえば10時が始業時間であった場合、勤務時間は10時を起算として19時まで定時労働時間が適用されます(休憩1時間含む)。
この18時を過ぎた場合が残業時間に該当し、割増賃金が発生。さらに22時~翌日5時までの時間も残業していた場合は、残業手当+深夜手当が加算されます。
次に、変則的なシフト勤務の例を考えてみましょう。19時〜翌6時まで働く場合(休憩1時間含む)は以下のように考えます。
まず、19時から実働8時間を超えた段階で、残業手当(25%)が加算されます。この場合は、22時〜翌4時までは深夜手当(25%)のみ加算され、4時〜5時の間は深夜手当と残業手当(合計50%)が加算されます。5時以降は残業手当は支給されないため、5時〜6時は残業手当のみの支給となります。
複雑に見えますが、始業時間を起点にして考えれば難しくありません。
バイトにもおすすめ!深夜手当の計算ツール
深夜手当は、わざわざ手計算をしなくても計算ツールをつかうことでかんたんに算出できます。以下の3種類をつかうのが一般的ですが、準備に手間がかかるものもあるため要注意です。
- スマートフォンアプリ
スマートフォンにインストールし、GPSを起動するだけで自動計算するものがある。 - 表計算ソフト(Excelなど)
先に説明した計算式を使ってシートを作成。Excel関数と給与計算の知識が必要になる - 給与計算ソフト
勤務時間を入力するだけで自動で計算。個人で購入してもよいが導入費用がかかる。
深夜手当は自身でも計算して記録しておくことをおすすめします。万が一不払いなどのトラブルが発生した場合、証拠として提出できるためです。もし計算が難しい場合でも、必ず働いた時間は記録しておくようにしましょう。
手当の支給は給与明細で確認しよう
本記事で紹介した以外にも企業が支払う手当にはさまざまな種類があります。手当が支払われているかは給与明細で確認しましょう。
万が一、手当の支給がなかったり、計算が合わなかったりする場合は会社に対して不払いの手当を請求できます。正社員やアルバイト、パートなど雇用形態は不問なので、細かくチェックしてください。同時に、深夜手当に該当する時間・計算が正しく行われているかどうかも確認しましょう。
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まとめ
深夜手当の計算そのものは難しくありません。条件が重なったり、残業があったりするとやや難しいものの、落ち着いて計算すれば個人でも算出できます。手計算以外の方法もあるため、自身で管理するようにしましょう。
タイミーは、企業側が時給を設定するだけで深夜割増手当も自動換算のうえ、日給が割り出される仕組みです。タイミーも活用しながら、仕事を探してみてください。
- 監修者
- 社会保険労務士法人スマイング 特定社会保険労務士 成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保健労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT企業関連。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生®️(商標登録済み)」を展開。
https://www.it-jinji.net/