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スキマバイトサービス「タイミー」は、アプリ一つですぐ働いてお金がもらえるサービスとして、全国500万人の働き手の方にご利用いただいています。(※)その中には、ミドルシニア・シニアの方もいらっしゃり、「社会との繋がりを感じるために」「健康のために」といった、お金を稼ぐ以外の目的で活用されている方も少なくありません。
高齢化が進む中、ミドルシニア・シニア世代の多様な働き方を確保することは、現代社会においてますます重要視されてきています。そこで今回は、『人材活用進化論』(日本経済新聞出版)などの著書があり、多様な人材活用や「働き方」に関する深い知見を持つ、東京大学名誉教授 佐藤博樹さんと、弊社スポットワーク研究所所長の石橋との対談を通じて、「働く」がミドルシニア・シニア世代に何をもたらすのかを明らかにしていきます。
※2023年7月時点
- 東京大学名誉教授
- 佐藤博樹さん
東京生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授、中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授などを歴任。 著書として、『人材活用進化論』、『新しい人事労務管理(第6版)』(共著)、『ダイバーシティ経営と人材活用―多様な働き方を支援する企業の取り組み』(共編著)、『働き方改革の基本』(共著)、『団塊世代のライフデザイン』(共著)など。
- 株式会社タイミー スポットワーク研究所 所長
- 石橋孝宜
中央大学卒業後、コンサル、ウェディング、飲食会社での現場・人事・事業経営者を経てタイミーに入社。入社当初より求職者・求人者双方の利便性を高めるべく、プロダクト設計に寄与。人事や現場の経験からユーザーが使いやすいサービス設計に寄与するとともに、コーポレート、事業それぞれの責任者を経てスポットワーク研究所所長となる。 新しい働き方であるスポットワークのエバンジェリストとして、より安心安全に働けるスポットワークの環境整備を担う。
ミドルシニア・シニアの男性と「働く」の関係性
石橋孝宜(以下、石橋):
タイミーは「働きたい時間」と「働いて欲しい時間」をマッチングするサービスで、現在500万人以上のワーカーさんを抱えています。掲載している仕事はその日のスキマ時間ですぐに働くことができる「スポットワーク」であり、ワーカーさんの事情に合わせて働ける点が大きなメリットと言えます。
働き方はワーカーさんの年齢や性別などの属性やその人ぞれぞれで大きく異なっていて、1日8時間の仕事を週5日続ける人もいれば、週に1回だけ働く人もいます。固定の時間帯で働けない方も含め、一人ひとりのライフスタイルに合わせたそれぞれの方法でご利用いただいてます。
▼ミドル・シニア層によるタイミーの活用事例
定年後の働く場所としてもスポットワークは機能していて、タイミーではこうしたミドルシニア・シニア層の新しい働き方にこれからも貢献したいと考えています。佐藤さんは現在、ミドルシニア・シニアの働き方について、どのような課題意識をお持ちですか。
佐藤博樹(以下、佐藤)さん:
シニアの「働く」を考える上でまず注意しておかなければならないことは、その人に「働く」以外の選択肢があるかどうかということです。日本人は高齢期になっても就業意欲が高いという議論がありますが、特にずっと仕事に打ち込んできたシニア世代の男性は、「働く」以外に社会と繋がる手段がないこともあります。こうした「『働く』以外選択肢がない」人達を就業意欲が高いと判断するかどうかには慎重にならなければいけません。
これから、40代50代の男性であっても、仕事以外に趣味や社会活動をする人が増えてくると、「働く」以外の選択肢を取る人も増えてくるかもしれません。高齢になっても働いている人は、収入より社会的繋がりを求めている人が多いのも事実です。収入や貯蓄があるなら、別にボランティアでも良いかもしれない。タイミーはスポットワークの募集を多く掲載していますが、もっと広く社会貢献につながるような活動の募集を扱ってみても良いかもしれませんね。
参考: 総務省「令和3年版高齢社会白書(全体版)」
スポットワークは60代後半からの働き方に適している
——ミドルシニア・シニア層と「スポットワーク」の相性について、どう思われますか?
佐藤さん:
65歳以上のシニアに役立つだろうと考えています。定年退職年齢を65歳未満に定めている事業主は高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、就業機会を確保しなければなりません。つまり、60歳で定年を迎えても、65歳までは会社が就業機会を提供することが多い。
一方で、70歳までの就業機会の確保は努力義務になっているので、企業が必ずしも高齢者に就業機会を提供し続けるわけではありません。そこで、65歳以降は従来のような働き方とタイミーが提供するスポットワークのような働き方のどちらが良いか選ぶことになるでしょう。
あとは、募集内容が、シニアが経験や知識を活かして仕事先に貢献できる内容になっているかも気になるところです。たとえば、あるNPOでは、月に1回出向いて経理の手伝いをするボランティアの仕事があります。また、福祉施設では一時的に外部の看護師や介護士のサポートが必要な場合もあります。こうした専門的な知識を活かしたスポットワークもこれから増えてくると、社会貢献性が高まると思います。
(参考:厚生労働省「高年齢者の雇用」)
石橋:
ありがとうございます。おっしゃる通り、確かにスポットワークを募集する側の使い方も重要なポイントですね。これまでのタイミーは、どちらかというとスキル経験がなくても働けて、すぐに働けてすぐにお金がもらえる働き方の認知を広める、いわゆる「スポットワーク1.0」のような状態でした。次のステップとしては、「スポットワーク2.0」として、専門的な知識を活かしたスポットワークなど募集側に、色々な「働いてもらい方」があることを認知してもらうフェーズだと考えています。
佐藤さん:
そうですね。短い時間で、面倒な契約などの手続きもタイミーがやってくれるならワーカーさんも手軽に仕事を始められますし、スポットワークで企業や社会の課題を解決するなら、高いスキルレベルに対してもスポットワークを適用することが求められますね。
石橋:
ミドルシニア・シニア層の方々がスポットワークをすることで、今まで企業だけで活用されてきた経験・スキルが外の社会にも活用されるようになる。このように、スポットワークを通じて企業と社会の溝を埋めていきたいと思っています。
スポットワークは女性の仕事への復帰もサポートできる
——これまでミドルシニア・シニア世代を中心に話を進めてきましたが、スポットワークはその他の層にも貢献できるとお考えですか。
佐藤さん:
はい。スポットワークは女性の就業機会の提供にも貢献すると考えています。「L字カーブ」と呼ばれる女性の正規雇用比率を示す統計がありますが、この女性の正規雇用比率は20代後半の50%台をピークに、それ以降低下していきます。つまり、30代後半、40代と子育てを経験する年代に仕事を辞めてしまい、そこからなかなか再就職できない現状があるわけです。
タイミーなら、出産子育てで一度辞めた女性たちに就業機会を提供することができます。家庭の事情などでフルタイムの仕事は難しくても、スポットワークなら自分の都合に合わせて好きなときに働くことができますからね。
(参考:男女共同参画局「2-10図 女性の年齢階級別正規雇用比率(L字カーブ)(令和3(2021)年)」)
石橋:
確かにそうですね。実際に、タイミーがきっかけで正社員に登用されたミドル世代の主婦の方もいらっしゃいます。お子さんがいるとどうしても働ける時間が限られていますので、フルタイムの仕事以外の選択肢として、主婦の方にもよく使っていただいてます。
▼タイミーから正社員になった例
▼育児をしながらタイミーを活用して働く例
佐藤さん:
社会全体としてはこうした女性のキャリアのブランクに配慮しなければなりませんが、雇用する側はやっぱり心配なんですよね。仕事のスキルだけでなく、雰囲気に馴染めるか、家庭と両立できるかなど、考えるべきことは多いはずです。タイミーで働いてみれば、両者のミスマッチをある程度防ぐことができるかもしれません。
石橋:
ミスマッチを防ぎながら、各世代の「働く」に関するバリアを取り払えるかが課題です。さまざまな境遇の人が⾃分の強みを活かして仕事ができる、いわゆる「ワークバリアフリー」な環境づくりを進める必要がありますね。
シニアの経験値を社会がどう活かすか
——次に、「シニアと『働く』にまつわる社会課題をスポットワークは解決しうるか?」という疑問にお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
佐藤さん:
シニア世代がスポットワークで働く上では、収入が得られるだけでなく、次世代の育成に携わることができる点も重要な要素です。年齢を重ねると、次の世代を育てることが生きがいにつながることが多いのです。スポットワークを活用して、シニア世代の経験や知識を若い人たちに伝えることもできるはずです。
石橋:
企業であれば、若手の相談役みたいなポジションを任せるのはありですね。あらゆる産業でご自身の経験やノウハウを活用いただけそうです。
佐藤さん:
若い世代と仕事などで関わると、シニア世代も健康的になり、自己肯定感が高まります。自己肯定感は人から期待されることで高まるので、シニア世代が社会とのつながりを築く上では理想的な関わり方と言えますね。
たとえば、ものづくりの現場で、外国人労働者に技術と日本語を教えることもできるでしょう。今は募集を掲載する企業側がまだスポットワークの可能性に気付けていないのかもしれませんね。
石橋:
ということは、求人を募集する企業に対して、タイミーをもっと効果的に使ってもらえるようにアピールや提案をしていく必要がありそうです。ワーカーを単純な労働力として扱うのではなく、本人たちが培ってきた能力や経験をフルに生かせる働き方を提供していかなければなりませんね。
働き先に行くと身内になるような感覚を持つ方も多いと思いますが、タイミーはその身内の範囲を広げて、半径数キロまでならどこでも働けるような、ある種の相互扶助を創り出したいです。
佐藤さん:
ただ、当然タイミーを使って働くミドルシニア・シニア世代も、若い世代とうまく関係を築くスキルは求められます。
——最後に、佐藤さんが考えるスポットワークの可能性について教えてください。
佐藤さん:
時間に余裕がある人が、好きなことをして人や社会とつながることができるという仕組みは、とても意義があると感じています。それぞれはスポットでの仕事だけれども、自分の中で色々な仕事を組み合わせて、一箇所で働くよりも豊かな働き方・経験ができる。また、片方は仕事として、もう片方はもっと社会貢献寄りの働き方をして、といった具合に自分の時間をいろんな可能性の組み合わせで実現できる。
企業や仕事を募集する側としては、現場でスキルや社会経験をどう学んでもらうかを考える必要がありそうです。今後は、より良いスポットワークの活用方法をコンサルティングしていくことで、社会に価値を生み出せるのではないでしょうか。
- タイミーラボ編集部
タイミーラボは、株式会社タイミーによるオウンドメディアです。
https://lab.timee.co.jp/