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「めんどくさい」気持ちとどう向き合えばいいの?精神科医の井上さんに聞く対処方法

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「めんどくさい」気持ちとどう向き合えばいいの?精神科医の井上さんに聞く対処方法

目次

「この課題めんどくさいから、後回しにしよう」「友達との約束、急にめんどくさくなった」

皆さんはこんな「めんどくさい」気持ちになったことはありませんか?

物事を進めるにあたって気分がのらなかったり、だるくなったりするのは誰でもありますが、めんどくさいという感情を抱いてしまうのはなぜなのでしょうか。

そこで編集部は、『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』(WAVE出版、2021年)など、心や身体の悩みに寄り添う書籍を多数出版されている精神科医の井上智介先生に、めんどくさいという気持ちについてお話をお伺いしました。

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「無理に人に合わせる必要はありません!」——スキマバイトでストレスなく働く秘訣を、精神科医の井上さんに聞く | タイミーラボ - スキマで働く、世界が広がる。

春は環境の変化があり、慣れないことも多く、ストレスが溜まりやすい季節です。日々の生活に疲れを感じている方もいるのではないでしょうか。 そこで、今回は精神科医・産業医の井上智介さんに、働くうえでの「ストレスとの上手な付き合い方」について聞きました。スキマバイトがメンタルに及ぼす影響などを解説していただきます。

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「めんどくさい」って悪いもの? 人が「めんどくさい」と思う理由

——井上先生! 私は何をやるにしても「めんどくさい!」って思ってしまうんです。「めんどくさい」っていう負の感情を克服するには、どうすればいいですか?

でも、めんどくさいという気持ちって、全部が全部悪いわけではないんです。

——えぇ! それってどういうことなんですか?

では、まずは「めんどくさい」の正体から解説していきますね。

めんどくさいというのは、「向き合わなければならないことが、今の自分にとって体調的に、もしくは精神的に“重い”と感じている状態」のこと。例えば、やらなきゃいけないことに対して身体が動かなかったり、「気が進まない、億劫だ」と後ろ向きな気持ちになったり。なかなか行動に移せないことを指しています。

じゃあ、人はなぜ、めんどくさいという気持ちになってしまうのでしょう。

まず考えられるのは「自分の身体や心が疲れている」から。肉体的に疲れが溜まっていたり精神的に余裕がなかったりと、心身のコンディションが良くない場合は何事もだるくなってしまいます。

例えば、1日の仕事が終わって帰宅したときのことをイメージしてみてください。「今日は忙しかったぁ」とベッドに倒れ込んでダラダラしているうちに、寝てしまったことはありませんか? やることはあるのに動けないのは、心身が疲れ果てているからなんですね。

——確かに、休日になるとなかなか布団から出れなくて、1日ダラダラ過ごしてしまうときがあります。

仕事だけではなく、家事や育児、介護など、日々の生活でやらなければならないことってたくさんあるじゃないですか。それが積み重なってくると、身体や心が無意識のうちに休息を求めるようになります。それがめんどくさいという感情になって表れてくるわけです。ある意味、自分のコンディションを測るバロメーターだとも言えるでしょう。

ですから、普段できていたことが急にめんどくさくなったら、身体や心がSOSを出していると捉えた方がよい場合があります。外出をやめてたまにはゆっくり休むなど、無理をしないことが何よりも大事ですね。

「めんどくさい」が起こる要因は、さまざまなシーンや感情に影響している

——めんどくさいと感じたら、無理をせずに休むことも大切なんですね! 身体や心の疲れ以外に、めんどくさいと感じる理由ってあるんですか?

そうですね。「向き合う内容自体」にも原因があります。めんどくさいと感じる対象・シチュエーションは人によって異なりますが、いくつか例を挙げてみましょう。

原因①:今の自分にとって優先度や価値が低い場合

例)忙しい中で頼まれた雑用業務など。今、必要なことではないのにやらなきゃいけないと、負担に感じてしまうから

原因②:ゴールまでの工程が多い場合

例)長くて乗り換えが多い通勤・通学。複雑でステップが多い仕事など。時間がかかることがわかっている場合、めんどくさい要因に

原因③:不安や恐怖心がある場合

例)終わるか想像できないタイトな締め切り対応など。「できるかな?」という不安感情との闘いは、精神的な労力となってしまう

原因④:集中力を必要とする場合

例)大量で細かいデータ入力など。作業自体は簡単でも、同じ作業の連続で気が張る場合、次第にめんどくさいと感じるようになる


——意外とたくさんあるんですね。先生はどんなときにめんどくさいと感じますか?

僕は「お腹が満たせればご飯は何でもいいや」というタイプなので、料理をする行為にめんどくさく感じますね。自分の中の優先順位が低いのですが、一方で、料理という行為自体が好きでいくらでも時間と手間をかける人もいます。

このように優先度や価値は人によって違うので、めんどくさいことも異なるのがポイントです。

——嫌だと思うことに対してめんどくさいと思うのはわかるんですが、友達との約束やイベントなど、楽しみにしていたことも、直前になるとめんどくさくなってしまうのはなぜなんでしょうか?

この理由は、「約束というゴールまでにこなさないといけない多くの過程」が突きつけられたからでしょう。海外旅行を例に挙げると、計画した当初はワクワクして楽しみだったはずなのに、日程が近づいてくると、宿泊先を手配して、スーツケースに着替えを詰めて、パスポートも用意して……と、やらなきゃいけないことが出てくるじゃないですか。

休日の外出も同じで、家を出るまでに洗顔して、着替えて、家族のご飯を用意して、お化粧をして、お金を降ろしてなどと、そこまでの労力が可視化されちゃうんです。もちろんその先には楽しみが待っているのだけど、やらなきゃいけないことが目の前にズラーっと並んでいる状態に怖気づくわけですね。

「めんどくさい」が起こる要因は、さまざまなシーンや感情に影響している

——ゴールまでのステップが原因なんですね。ちなみに「この人にメールを返信するのがめんどくさい」など対人関係も影響するんですか?

ここは「不安や恐怖心」と関連するので具体的に説明しますね。

人は自分の行為に対して「報酬の期待値」を想定します。これは、誰しもが何かしらの行動を起こすときに、自分にプラスかマイナスかを無意識に考えてしまうというもの。行動する際に「これをやればお金がもらえる」「感謝されるだろう」といった物理的・感情的報酬を予測するわけです。

そのため、不確実性が高く報酬が想像できないと、ストレスに感じます。人間関係はまさに不確実な要素であって、こっちがいくら優しく対応しても必ず相手が同じように返してくれるとは限りません。丁寧にメールを返信してもそれが評価につながるわけでないし、相手はそれが当たり前と思っている可能性もある。このように、思った以上の報酬が得られない不安から、めんどくさいと思ってしまうことはあります。

テスト勉強をしていると急に机の周りや部屋の中を掃除することありませんか? あれも、テストという「結果が不確実で予想できないもの」に対する不安の中で、綺麗になるという確実な結果を求めるからなんですよ。

——不確実なものを目の前にすると、不安を感じてめんどくさくなるということですが、タイミーを申し込もうとする際にめんどくさくなってしまうのも、同じ理由ですか?

そうですね。タイミーのように毎回新しい職場で働くというのも、それなりにハードルは高いはずなんです。

そのため、「嫌な人がいたらどうしよう」「職場に馴染めなかったらどうしよう」とか、人間は何かにつけて行かない理由を考えて正当化しようとします。これは自然な人間の反応で、特に新しいことをするときに、自分が傷つかないように防衛本能が働いてしまいます。

じゃあ、そのめんどくさいという感情を乗り越えるために必要なのは、視点を変えることです! 目の前の嫌なことばかりに目を向けず、その先のゴールや得られる報酬を明確にしておくことが非常に大切になります。

「めんどくさい」から抜け出すための4つの方法

——めんどくさいの原因について教えていただきましたが、これらから脱却する方法はあるのでしょうか?

もちろんです!上で紹介した4つに当てはまる方法を紹介しますね!

乗り越える方法①:小さいことから始めてみる

目の前に立ちはだかる“やること”に対して、小さいものから1つずつ取り組んでみる。ゴールに向かって一歩一歩進んでいる状態にするのが大切です。めんどくさい対象って大きな塊に見えますが、やることを書き出すと、案外1つ1つの作業自体は簡単だったりするんですよ。「意外とできるじゃん」と頭が認識できるのでおすすめですね。

また、作業工程をできるだけシンプルにするのも重要です。ゴールまでにやらないといけないことが多いと誰しもがやる気を阻害されてしまいます。例えば、平日に料理するのは大変だから休日に作り置きを用意するなど、先回りのひと手間が大事だったりします。

乗り越える方法②:あらかじめ周りに宣言する

具体的には、家族や友人などに共有しておくなどです。

例えば、タイミーをやろうと申し込むものの、当日になったらめんどくさくなってキャンセルしちゃう人は、周りに宣言するとよいでしょう。「明日8時からタイミーだから起こしてよ」と何か頼んでおくのはもちろん、「明日タイミーで働いてくるね」と共有するだけでも効果があります。

乗り越える方法②:あらかじめ周りに宣言する

周りに宣言しておけば、自分の中で責任感が生まれるし、下手な言い訳で逃げられません。周りの人を巻き込むことで、自分のめんどくささを打ち消すことができますよ。

乗り越える方法③:目に触れやすいようにする

めんどくさくなることを自分の見える範囲に置いておくのも有効です。

タイミーをやりたいのについついめんどくさくなる人の場合、アプリをスマホのホーム画面の一番目につく位置に置いておくんです。スマホを見る度に目につくし、アクセスもしやすくなりますよね。

実は目に触れないものって自分の中で優先順位が低くなり、やがて忘れてしまう。いつも意識できるようにしておくことで、自然に優先順位が高いものだと認知するようになります。

乗り越える方法④:自分自身にご褒美を用意する

新しいことって不安で緊張するし、めんどくさくなりがちだと説明しましたが、その場合は終わったあとのご褒美を準備しておくのもいいですね。

「撮り溜めていたドラマを一気に見よう」「今日はスイーツを買おう」といった些細なもので構いません。タイミーの場合、勤務後すぐに報酬が振り込まれるので、その金額をチェックするというのもわかりやすいご褒美です。確実にプラスになるものを考えておくと、めんどくさい感情に勝てると思いますよ。

……この他にも、「疲れが溜まっていない朝に実行する」「誰かと一緒に取り組んでみる」など、めんどくささを少しでも軽くする方法はあります。ぜひいろいろ試して自分に合った方法を見つけてくださいね。

自分の中の「めんどくさい」を知ることで、人生を豊かにする

——めんどくさいの特徴と解決法は分かりましたが、冒頭でお話しされていた「めんどくさいと感じることって、全部が悪いことではない」ってどういうことですか?

実際、めんどくさいという感情自体をゼロにしなきゃいけないかって言ったら、そうではないと思うんです。なぜなら、それは自分のコンディションや優先順位、好き嫌いを教えてくれるものだから。今は優先順位が低いだけってことも往々にしてあるだろうし、自分の体調の変化に気づけるかもしれないですよね。逆に「めんどくさいって思ってはダメだ」など完璧を目指そうとすると、かえってストレスになってしまうことも。

また、めんどくさい気持ちに一人で立ち向かう必要はありません。誰かと一緒に乗り越えればいいんです。一人ではめんどくさいことでも誰かと一緒なら意外と楽しく取り組めることってありますよね。「友達も一緒だから」と主体的に取り組むための理由にもなるでしょう。

だからめんどくさいという感情は、自分が好きだと思える時間を増やしたり、人と一緒に協力したりできるという意味で、実は人生を豊かにしてくれるものなんですよ。そう考えると「めんどくさいと思うことも、案外いいものだな」って思えませんか?

もちろん、やるに越したことはないので、解消できるものは解消しつつ。解消できないものでも否定せずに受けとめて、付き合っていったらいいんですよ。

「あぁ、今日はめんどくさいって思ってるな(笑)」と軽く受け止めて、付き合っていくぐらいの気持ちで過ごしてみることをおすすめします。 

(取材・執筆・編集:齋藤裕美子)

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/media/井上 智介
監修者
井上 智介
SNS

兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。精神科医として、うつ病などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭などのトラウマケアに注力。また、産業医としては一般的な労働の安全衛生の指導に加え、カウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、ブログやTwitter、講演会などを通じて「ラフな人生をめざすこと」を発信している。

https://twitter.com/tatakau_sangyoi

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