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「無理に人に合わせる必要はありません!」——スキマバイトでストレスなく働く秘訣を、精神科医の井上さんに聞く

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「無理に人に合わせる必要はありません!」——スキマバイトでストレスなく働く秘訣を、精神科医の井上さんに聞く

目次

春は環境の変化があったり、人との新しい出会いがあったりする季節です。楽しみなことがたくさんある一方、慣れないことも多く、ストレスが溜まりやすい季節とも言えます。タイミーのようなスキマバイトで働くワーカーさんのなかにも、日々の生活に疲れを感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで、今回は精神科医・産業医の井上智介さんに、働くうえでの「ストレスとの上手な付き合い方」について聞きました。ストレスの原因と対処法はもちろん、スキマバイトがメンタルに及ぼす影響、利用するうえで意識したい考え方を解説していただきます。

「60点でOK!」柔軟な考え方がストレスを減らす

——まずは、井上さんの経験をもとにストレスの正体について伺いたいと思います。

ストレスとは「自分では変えようがない環境や、物事から生まれるプレッシャー」のことです。特に、働くうえでのストレスの原因は大きく3つに分けられます。

1つは「仕事の量」。納期に間に合わせないといけない仕事の量が多すぎる切迫感がストレスになります。2つ目は「仕事の質」。いちメンバーだった人が管理職になって疲弊するなど、向き不向きやスキルの有無によって、自分に合わない仕事をしている場合に生まれるストレスです。

3つ目は、僕の患者さんの相談のなかでも一番多い理由で、「職場の人間関係」です。人間関係の問題は相手がいることなので、仕事の量や質と比べて個人の努力では改善しづらく、悩んでいる人は多いように思います。

——変えたいのに変えられないことが、ストレスの要因になるんですね。ストレスを溜めやすい人と溜めにくい人の違いはありますか?

人によってストレスのキャパシティは違いますし、ストレスを解消する能力の高さも違います。性格の話をするなら、「内向的すぎる人」はストレスを溜めやすいと言えます。なぜなら、自分の内側の不快感や違和感を外に伝えることができず、抱え込んでしまうからです。

また、「考えが柔軟じゃない人」もストレスを溜めやすいと言えます。真面目で几帳面で責任感があるのは素晴らしいことですが、いきすぎると「手を抜いてはいけない」「いつも全力でやるべきだ」という“100点思考”に陥ってしまう。自分に対しても相手に対しても、足りない部分ばかりに目を向けてしまい、ストレスを溜めやすくなるんです。

だから、僕はいつも“60点思考”が大事だと伝えています。自分も相手もお互いに、40点くらいの完璧じゃない部分があることを許せると気が楽になるんです。

——60点でいいと思うのはなかなか難しい気もします。つい100点を目指したくなってしまいます......。

自分以外の視点で考える癖をつけるのが効果的ですよ。おすすめは、自分のパートナーや、好きな著名人、アニメや映画のキャラクターの視点を想像してみること。

例えば、ドラえもんの「のび太」なら、頑張りすぎて疲弊しているあなたの姿を見て「もっと頑張れ」とは言わず、優しい言葉をかけてくれると思います。それが、100点思考で苦しくなっている自分に、本来かけてあげたい言葉です。何度かイメージするうちに、「そういう考え方もあるのか」と思えてくるようになり、少しずつ柔軟な考え方ができるようになります。

小さい挑戦の繰り返しが自信につながる

——ストレスとは自分では解消できないプレッシャーのことで、その要因には環境的なものと内面的(性格的)なものがあるということがわかりました。では、タイミーのようなスキマバイトが、メンタルの観点からはどう見えるか教えていただけますか?

スキマ時間で自由に働けることは、メンタルにとってすごくプラスです。時間の過ごし方を自分で決められる「自己決定感」が、充実感をくれます。また、終わりの時間を決められるのも良いポイント。人が一番ストレスを感じるのは、辛いのに終わりが見えないときですからね。しんどい仕事だとしても、時間通りに働けばきちんと時給が支払われるというポジティブな着地を思えば、乗り切ることができます。

あとは、スキマバイトを通じて日常生活にはない「社会との接点」を持てることもメリットだと思います。会社員なら、職場でも家でもない、いわゆる「サードプレイス」になり得ますし、主婦・主夫の方でいえば家事や育児から離れて、社会とつながりを持てる機会にもなる。自分を受け入れてもらえる場所が複数あると、メンタルは安定しやすくなります

——スキマ時間に好きな場所で働けることは、メンタルにとってプラス。逆に、マイナスだと思う部分はありますか?

マイナスとまでは言いませんが、僕の患者さんでタイミーを利用している方が言っていたのは、「仕事の選択肢が多くて、比較するのが大変」ということ。都市に住んでいて募集の数が多いらしく、その中から時給や場所、条件をひとつずつ調べることが負担になっているようです。長期的に見たら「自己決定」が幸福につながることは間違いないですが、その途中の比較検討をしんどく感じる人もいるのだと思います。

——「自己決定」の要素は残しつつ、絞った選択肢が提示されると良いのかもしれませんね。タイミーでは、初めての仕事を経験する人も多くいます。その点はどう考えられますか?

タイミーのように、1日限りの短い時間から初めての仕事に挑戦できることは、メンタルにとってすごくプラスだと思います。「できるかわからないことを、なんとかやり遂げた」という経験が積み重なると、「自分には目標を達成する力がある」と信じる感覚、“自己効力感”につながるからです。

自己効力感を高めるために、必ずしも難易度が高いことをクリアする必要はありません。小さいチャレンジだとしても、「挑戦すると決めて、やり遂げた」と感じられる回数が重要なんです。積み重ねた自信は、次に新しいことを始める際の自分を励ましてくれます。

もちろん、思った以上に慣れない業務にあたって、一時的に自信を失うこともあるかもしれません。その場合は、先ほど話した“60点思考”を意識してください。「ちゃんと終わりの時間まで頑張れた」と、自分を褒めてあげて欲しいです。自分にとっての得意不得意や向き不向きがわかることも大事な経験なので、あまり最初からハードルをあげすぎず、新しい仕事に挑戦してみるのがおすすめです。

「友達100人できるかな」の刷り込みを捨てよう

——最初から100点を目指さなくていいなら、初めての挑戦もポジティブに捉えられるかもしれませんね。では、ストレスの大部分を占める「人間関係」についてはどうでしょう。タイミーでは、その日限りで一緒に働く人も多くいます。

同じ職場で長く働くわけではないとしたら、その日の仕事をスムーズにできればよく、いい意味で深い人間関係を築く必要がないので、メンタル的な負担は少ないと言えます。自分とは違う世代や世界で生きている人たちを知ることができるのも、いい刺激になるはず。

ただ、タイミーで働いている患者さんから「職場ならではのノリについていけず、孤立感を感じる」という話を聞くこともあるんです。そうした場合は、無理をして混ざろうとしたり、合わせたりする必要はないと答えています。任された仕事がスムーズにできる範囲でコミュニケーションを取れれば十分。相手のことを深く理解したり、自分の本音をさらけ出したりしなくていい。人はいろんな仮面を持っていますから、時と場合によって使いわけるのが大切です。

——人に合わせようとしすぎると疲れてしまいますからね。

人間関係に悩む人の多くは、「他人との距離感の調整が苦手」なんです。価値観が合わない人とも仲良くしないといけないと思っているから、お願いされたことを断れなかったり、自分が大変なときに相談できなかったりします。

小学生の頃からそう刷り込まれているんですよ。「1年生になったら友達100人できるかな」という歌があるでしょう。あれは良くないです。100人も同級生がいたら合わない人もいるはずなのに、全員と仲良く友達になることが正解なわけはありません。

本当に知って欲しいのは、「社会には合う人も合わない人もいて、関係性の深さはそれぞれで変えればいい」ということです。でも、大人になれば、そうした関係性を持てる場所はなかなかありません。会社でも学校でも、地域のコミュニティでも、ある程度、長期的な付き合いが前提になっていますから。

そうしたなかで、タイミーのようなスキマバイトは、人との距離感を保ちながら一緒に働く体験ができる貴重な機会ではないでしょうか。その経験から、人との最適な距離感を学ぶことができれば、他の場所でも心地よく人と関われるかもしれません。

「好きなこと100リスト」が、しんどいときを支えてくれる

——スキマバイトをするうえでは、心の持ちようを工夫することが大事だとわかりました。とはいえ、仕事をしていると少なからずストレスを感じることはあると思います。そんなときの対処法を教えていただけますか?

心と身体は密接に関わっているので、まずは身体の緊張を解いていくことが大切です。固まっている筋肉をほぐすために、ストレッチや深呼吸をしてみてください。いきなり心を緩めるのは難しいので、身体から和らげていくんです。

また、「好きなこと100リスト」を作ることをおすすめしています。スマホのメモや手帳に、気分が上がる行動を100個書いておくんです。例えば、「コンビニで好きなスイーツを買う」といった実行しやすいものをたくさん書くのがおすすめ。100%のストレスが95%になるだけでも余裕ができて、さらに気分を上げるために行動できる好循環が生まれます。

リスト化しておく理由は、人はしんどくなると頭がまわらなくなり、なにをしたらいいのか分からなくなってしまうからです。暴飲暴食や夜更かしなど、その場しのぎの不健全な行動にならないように、リスト化したものから「選ぶだけ」にしておくと自己決定感も得られるのでいいと思います。

——たしかに、夜更かしして後で後悔したことあります(笑)。対処法は良くわかりましたが、そもそもストレスを溜めづらくするためにはどうしたらいいでしょう?

当たり前に聞こえるかもしれませんが、一番大切なのは睡眠をきちんととることです。睡眠時間が減ると、ストレスのキャパシティが狭くなり、小さなことでも許せなくなります。すると、さらにストレスが溜まり、夜も考え事をしてしまい、また睡眠が削られるという悪循環に陥ってしまうんです。

思考も身体も休ませるために、1日7時間は寝て欲しいです。どうしても日によって短くなる方は、週末やお休みの日に足りない睡眠時間を補う。長期的な睡眠負債を取り戻すのは大変ですが、1週間くらいの短期間でこまめに返済していけば大丈夫です。

——やはり生活習慣が大切なんですね。いろいろな角度からストレスの対処法を聞けて、勉強になりました。

お力になれていたら嬉しいです。最後にお伝えしておきたいのは、「ストレスや悩みの多くは、時間が過ぎれば忘れる」ということ。患者さんのなかにも、1年前に自分がなにに悩んでいたかをパッと思い出せる人はそれほど多くはないです。ですから、「毎日ストレスを解消しなきゃ」と考えるのではなく、「1年後には忘れているだろう」くらいの楽な気持ちで捉えてみることが、ストレスとの上手な付き合い方なのかなと思います。

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/media/井上 智介
監修者
井上 智介
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兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動している。精神科医として、うつ病などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭などのトラウマケアに注力。また、産業医としては一般的な労働の安全衛生の指導に加え、カウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、ブログやTwitter、講演会などを通じて「ラフな人生をめざすこと」を発信している。

https://twitter.com/tatakau_sangyoi

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