目次
「未経験の職種に挑戦してみたい」
「必要な知識・スキルを身につけたい」
「希望している職種の勉強ができるところを知りたい」
そんな人には、職業訓練の受講がおすすめです。職業訓練には、無料で受講できるコースがあるほか、条件によって給付金をもらいながら受講することができます。
本記事では、職業訓練の受講内容、メリットなどについて解説します。転職を検討している人や求職中の人は、ぜひ参考にしてください。
職業訓練とは?
「職業訓練」とは、ハローワークが主催する、就職に有利になるような資格・スキルを身につけるための制度です。ハローワークを利用している求職者が利用できます。職業訓練を利用する際は、ハローワークで申し込みをしたあと、書類選考や面接が必要です。正式には、「公的職業訓練(ハロートレーニング)」という名称で、以下の2種類があります。
- 公共職業訓練
- 求職者支援訓練
公共職業訓練 | 求職者支援訓練 | |
---|---|---|
主な対象者 | 雇用保険を受給している方 | 雇用保険を受給していない(受給できない)方 |
概要 | 主に雇用保険を受給している求職者の方を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための訓練を無料で実施 | 主に雇用保険を受給できない求職者の方を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための職業訓練を無料で実施。また、一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を支援するための給付金(職業訓練受講給付金)が受けられる |
訓練期間 | 3ヵ月~2年 | 2ヵ月~6ヵ月 |
受けられる手当・給付金 | <雇用保険の求職者給付>
| <職業訓練受講給付金>
|
(参考:厚生労働省『あなたのしごと探しに、役立つスキルを。ハロートレーニング』)
では、それぞれで受講できる訓練コースについて、以降でくわしく見ていきましょう。
公共職業訓練
公共職業訓練は、雇用保険を受給している求職者が対象で、講義や演習の受講が可能です。雇用保険(失業手当)をもらいながら資格・スキルを取得することができます。また、訓練を受講しながら、ハローワークによる就職サポートも受けられます。テキスト代はかかりますが、講義は原則無料で利用できるのが特徴です。
●受講できる訓練コース
公共職業訓練で主に受講できるコースは、以下のとおりです。
技術系 | 機械、電気、金属加工、建設設備 |
事務系 | パソコンIT、スキル関係、医療、介護福祉関係 |
たとえば、技術系の機械科は、各種工作機械を使用して、金属加工を中心としたものづくり技術を習得できます。また、事務系の介護福祉士養成コースや保育士養成コースなら、介護福祉士や保育士の資格所得に必要な知識や技能を学ぶことができます。
●受講できる場所
公共職業訓練は、各都道府県から委託された民間の教育訓練機関にて受講することができます。具体的な訓練施設は、以下のとおりです。
- 職業能力開発校
- 民間の教育訓練機関(カルチャースクールや専門学校等)
- 職業能力開発短期大学校/職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)
- 職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)
求職者支援訓練
求職者支援訓練とは、雇用保険の受給期間が過ぎた人・利用できない人を対象に、就職に有利となるような知識・スキルを身につけるための制度です。1ヵ月10万円の給付金をもらいながら、無料で講義・演習を受けられるのが特徴です。訓練開始前から終了までハローワークが就職活動をサポートしてくれるため、受講しながら就職活動を進めることができます。
●受講できる訓練コース
求職者支援訓練で受講できる主な訓練コースは、以下のとおりです。
パソコン | ビジネスパソコン科、オフィスワーク科など |
営業・販売 | 営業販売科など |
介護福祉 | 介護職員実務者研修科、保育スタッフ養成科など |
医療事務 | 医療・介護事務科、調剤事務科など |
IT | WEBアプリ開発科、Android/JAVAプログラマ育成科など |
デザイン | 広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科など |
「基礎コース」と「実践コース」が用意されており、身につけたいスキルのレベルによって選ぶことができます。
●受講できる場所
厚生労働大臣によって認定された、民間の企業や介護施設・医療施設・教育訓練機関にて受講することができます。
職業訓練を受講する流れ
では実際に、職業訓練を開始するまでの流れや申込場所などについて説明します。「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」のどちらも、受講申し込みの流れは同じになるので、覚えておきましょう。
- 求職の申し込みをする
居住地にある所轄のハローワークで求職申し込みを行います。 - 職業訓練の申し込みをする
職業相談を受け、「職業訓練に適切なコースがある」とハローワークに判断されると、受講申込書などの書類が渡されます。申込書に必要事項を記入し、提出しましょう。なかには、訓練の必要性がないと判断され、希望のコースを受講できない可能性もあります。 - 受験・選考
訓練実施機関より、面接やコースによって筆記試験が行われます。 - 受講あっせん
選考に合格したら、ハローワークで受講推薦・受講指示・支援指示などのあっせんが行われます。 - 職業訓練スタート
指定された日から職業訓練が開始されます。初日は、就職支援計画書を持参しましょう。
後述する「職業訓練受講給付金」の申し込み手続きをする場合は、「1.求職の申し込みをする」際に、給付金の事前審査の申請も行うようにしましょう。
職業訓練中にバイト・パートはできる?
職業訓練は、就職が決まっていない失業者を対象とした訓練です。しかし、生活にかかるお金を工面するため、アルバイトやパートで働きながら職業訓練を受講したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
職業訓練中に、アルバイトやパートをすることは可能ではあるものの、一定の条件を満たす必要があります。条件をこえてしまうと、雇用保険(失業手当)がもらえなくなるほか、職業訓練の受講資格も取り消されてしまうので、注意しましょう。
以下では、「失業保険を受給している場合」と「職業訓練受講給付金を受給している場合」に分け、働きながら職業訓練を受講する際の条件についくわしく解説します。
雇用保険(失業手当)を受給している場合
雇用保険(失業手当)を受給している場合は、以下3つの条件を満たせば、アルバイトやパートで働きながら、職業訓練を受講することができます。
- 1日4時間未満で働く
- 週20時間未満で働く
- 1ヵ月以上の継続雇用を避ける
上記の条件をこえて働くと、勤務先の雇用保険に加入しなければなりません。そうなると、失業手当をもらえなくなるほか、ハローワークに就職が決まったと判断され、職業訓練校を退校になる可能性もあります。
また、労働時間を4時間未満におさえた場合でも、給与が一定料金をこえてしまうと、失業手当が減額になる可能性もあるため、トータルの勤務時間にも注意する必要があります。
職業訓練受講給付金を受給している場合(職業訓練受講給付金を受けている人がアルバイトやパートをする場合)
職業訓練受講給付金を受けている場合は、以下2つの条件をこえると給付金の対象から外れてしまうため注意が必要です(職業訓練受講給付金受給のための条件を一部抜粋しています)。10万円の給付金だけではなく、通所手当ももらえなくなります。
- 受講者の収入が月8万円をこえる
- 世帯収入が月25万円をこえる
職業訓練の受講は半日以上かかることが多く、受講日でない日は就活の予定が入ることもあるため、アルバイトやパートの時間を捻出するのは簡単なことではありません。それでも、生活費等のために働きながら受講する際は、「雇用保険を受給している場合」も「職業訓練受講給付金を受給している場合」も、タイミーなどの単発アルバイトなどで上記の条件をこえないように配慮して働くようにしましょう。
職業訓練を受講するメリット
職業訓練を受けるメリットには、どんなものがあるのでしょうか。以下、5つのメリットについて紹介します。
無料で受講できる
職業訓練は、基本的に無料で受講できます。というのも、労働者が転職する際には、就職するための知識や技術取得に手助けが必要な人に対して、国や都道府県が職業訓練を行う責任があるからです。
ただし、コースによっては、テキスト代は自己負担となる場合もあるため、受講したいコースの詳細を事前に確認しておきましょう。
同じ志を持った仲間と学べる
職業訓練を受けている人の多くは、「就職したい」「知識・スキルを身につけて仕事に生かしたい」という思いで、日々勉強しています。同じ目標をもった仲間と一緒に学べることは、心強く感じられるのではないでしょうか。コースによっては、グループ学習や一緒に演習を行う機会もあるため、お互いに切磋琢磨しながら勉強に励むことができます。
就職支援を受けられる
職業訓練では、就職活動にまつわる書類作成のアドバイスや模擬面接などのサポートを行っています。ハローワークとの連携により、就職先の紹介も可能です。
「履歴書の書き方がわからなくて、自分のよさをアピールしきれていない」「面接で緊張してしまって、いつも言いたいことが伝えられない」という人には、とくに大きなメリットであるといえるでしょう。
子どもを預けて受講できる
職業訓練校には、託児所が設けてあるところもあるため、子どもを預けて受講することができます。ただし、預けられる子どもの対象年齢は、未就学児(小学校入学前まで)としているところがほとんどです。下限に関しては、託児所ごとに異なるため、利用を検討している職業訓練校に問い合わせてみましょう。また、託児所の利用料は無料ですが、子どもの食事代やオムツ代は自己負担となります。
職業訓練受講給付金を受給しながら受講できる
職業訓練受講給付金とは、特定の条件を満たす人が、受講期間中に給付を受けながら職業訓練を受講できる制度です。給付金は、月額10万円の「職業訓練受講手当」と、訓練機関までの交通費か支給される「通所手当」の2つで構成されています。
職業訓練受講給付金を受給するには、以下の7つの条件をすべて満たすがあります。
- 税引き前の給与、年金、仕送りなどを含めた月の収入が8万円以下
- 同居または生計をともにしている両親、配偶者、子どもの収入の合計が25万円以下
- 世帯全体の金融資産(預金、株、投資信託など)が300万円以下
- 現在の所在地以外に土地や建物を持っていない
- すべての訓練日に参加している
- 世帯の中に給付金をもらって職業訓練に参加している人がいない
- 過去3年以内に特定の給付金を不正に受けとっていない
また、過去に職業訓練受講給付金を受けて職業訓練を受講している場合は、最後の受給より6年以上経過していなければ、利用できません。
職業訓練受講給付金の給付額は、以下のとおりです。
職業訓練受講手当 | 一律で1ヶ月10万円を支給 |
通所手当 | 職業訓練場までの交通費(2km未満は対象外) ※電車やバスなどの公共交通機関のほか、自家用車での通所が対象。1ヶ月4万2,500円が上限 |
また、訓練を受けるために、同居の配偶者などと別居して寄宿することをハローワークが認めた場合は1ヵ月1万700円の「寄宿手当」も支給されます。
職業訓練のデメリット
職業訓練を受講するメリットについて解説しましたが、もちろんデメリットもあります。ここでは、以下2つのデメリットについて解説します。
就職するまで時間がかかる
デメリットとしてまず挙げられるのが、職業訓練を受講してから実際に就職するまで、どうしても時間がかかることです。というのも、職業訓練には受講期間が定められており、その期間は3ヵ月程度のものから2年という長期コースのものまでさまざまです。
また、職業訓練期間中は失業期間となるため、失業期間が長いことをマイナス要素として考える企業への就職を希望する場合、就職活動に影響が出る可能性もあります。
生活費の工面に苦労する可能性がある
職業訓練は、失業手当の給付金を受けながら受講することができます。しかし、失業手当の受給額は、前職の給与の3分の2程度の金額になるため、職業訓練期間中は低い収入で生活しなければなりません。前職の給与があまり高くなかった場合、生活費の工面に苦労する可能性があります。
まとめ
未経験の職種に挑戦したい場合や就職に必要な知識・スキルを身につけたい場合は、職業訓練を受講するのもおすすめです。失業中で収入がない場合は、失業手当や職業訓練受講給付金などを受けながら受講することができます。
また、アルバイト・パートをしながら職業訓練を受講することも可能ですが、労働時間や収入の制限があるため、注意が必要です。そして、働きながら訓練を受けたいという場合は、必ずハローワークに申告してください。希望の職種に就職できるよう、職業訓練を活用してみましょう。
いますぐTimeeをダウンロード
- 監修者
- 社会保険労務士法人スマイング 特定社会保険労務士 成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保健労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT企業関連。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生®️(商標登録済み)」を展開。
https://www.it-jinji.net/