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2023年4月解禁の給与デジタル払いとは
給与デジタル払いとは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(賃金のデジタル払い)のことです。
労働基準法に「賃金通貨払いの原則(法24条)」の制限があり、なかなか実現に至っていなかったものの、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化を背景に、すぐに現金化できるサービスであることを条件として給与デジタル払いの解禁が実現しました。
2023年4月3日には資金移動サービス大手のPayPayが指定申請を提出したことを発表した*ほか、各業者が対応を行っています。
本記事では、(株)タイミーがスキマバイトサービス「タイミー」のアプリ利用者20,915人を対象に実施した「給与デジタル払いについてのアンケート」の結果と、給与デジタル払い導入のメリットデメリットをお伝えします。
従業員(受給側)の給与デジタル払いへのニーズを知りたい方は、ぜひご一読ください。
*「賃金のデジタル払い(給与デジタル払い)に向けて厚生労働省へ指定申請を提出」PayPay株式会社
従業員(受給側)の給与デジタル払いへの意向は?
給与デジタル払いの認知率
従業員(受給側)の中で「名称も内容も理解している」と回答した人は18.8%にとどまり、8割以上の人がその内容を理解していないという結果に。認知率はまだまだ低いようです。
給与デジタル払いの利用意向度
給与デジタル払いを「かなり利用したい」「まあまあ利用したい」と回答した人は26.5%と、「たぶん利用しない」「利用したくない」と回答した人(34.2%)を下回った。また、39.2%の人が「周囲の状況を様子見したい」「未定」と回答しており、これは認知率の低さにともなうものと思われます。
タイミーでの給与デジタル払いに関する意向は?
タイミーでの給与デジタル払いの利用意向度
給与デジタル払いがスキマバイトサービス「タイミー」で利用できるとしたら「利用したい」「まあまあ利用したい」と回答した人は全体の33.6%という結果に。前問の、本業の給料においての給与デジタル払いの利用意向度よりも、7.1pt高くなりました。
タイミーでの給与デジタル払いの利用を希望する理由
また、「利用したい」「まあまあ利用したい」を選択した人を対象に、そう回答した理由を質問したところ、「現金で引き出す手間が省けるから」「給与の入金がすぐに確認できるから」が、それぞれ50%以上と、多くの票を集めました。
スキマバイトで得られる程度の少額の給与においては、手軽さや利便性が優先されるものと思われます。
給与デジタル払いはPayPayでの受け取りが圧倒的人気
どのデジタルマネー(電子マネー)ブランドでの支払いを希望するかの問いにおいては、PayPayが圧倒的な票を集めました。サービスの普及度合いが顕著に反映されているものと思われます。
タイミーでの給与デジタル払いの利用を希望しない理由
反対に、タイミーでの給与デジタル払いを「多分利用しない」「利用したくない」と回答した人にその理由を質問したところ、「現金でお金の管理をしたいから」との回答が多数の票を獲得しました。決済方法が多様化しているが故に、一つの決済サービスに給与の管理を一本化することに抵抗を感じる人も多いようです。
給与デジタル払いのメリット
給与デジタル払い導入によるメリットをいくつかお伝えします。
手間やコストの削減
企業が従業員に給与を現金で支払う場合、給与の準備には多くの手間やコストがかかります。しかし、給与デジタル払いによって、給与の準備に必要な手間やコストを大幅に削減することができます。また、従業員も銀行口座に振り込めば簡単に現金を受け取ることができます。
安心・セキュリティの向上
給与デジタル払いによって、従業員は紙幣や硬貨を持ち運ぶ必要がなくなります。そのため、紛失や盗難のリスクが低減されます。また、給与デジタル払いにおいては、セキュリティがしっかりと管理されているため、不正アクセスによる被害を受けるリスクも低くなります。
銀行口座を持たない人への給与支払いが可能
銀行口座の開設のハードルが高い外国人労働者への給与支払いが容易になることもメリットの1つです。携帯電話番号といった情報だけで送金でき、現金以外の給与支払いが可能になります。
給与デジタル払いのデメリット
給与デジタル払いにおいては、デメリットもあります。それぞれを解説します。
システムトラブルのリスク
給与デジタル払いは、電子的なシステムを利用して行われるため、システム連携を行わなければなりません。また、システムトラブル発生のリスクもあります。システムトラブルが発生した場合、給与の支払いが遅れてしまい、企業は労働基準法の「賃金の一定期日払いの原則(法24条)」に違反してしまう可能性が出てきます。
プライバシー保護の観点からのリスク
給与デジタル払いは、従業員の個人情報を利用するため、プライバシーの問題が生じることがあります。また、従業員に成り済ましたアカウントに送金してしまうなど、労働基準法にある「賃金の直接払いの原則(法24条)」に違反してしまう可能性も考えられるでしょう。企業は、従業員の個人情報を適切に保護するように注意する必要があります。
まとめ
給与デジタル払いには、多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。企業が給与デジタル払いを導入する際には、従業員のニーズに合わせた対策を講じることが重要です。
本記事で紹介したスキマバイトサービス「タイミー」のユーザーの意見を参考にしてみてください。
- 監修者
- 株式会社タイミー スポットワーク研究所 神谷 一成
地方公務員として任用され、生活保護課という福祉の最前線で様々な非正規雇用者の生活をサポート。その後、インドネシアで労務コンサルタントとして国際労務の仕事に従事し、コラム執筆や大規模セミナー等を担当。帰国後、東京の大手コンサル会社を経て、2022年9月、スポットワーク研究所に所属。2018年、社会保険労務士資格を取得。