私のタイミー生活

変わることと向き合い続ける。あかしゆかさんの「そのときの自分」に合わせて変化する働き方

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変わることと向き合い続ける。あかしゆかさんの「そのときの自分」に合わせて変化する働き方

目次

あかしゆかさんは、1か月のうち20日ほどは東京でフリーランスの編集者・ライターとして働き、10日ほどは岡山県で本屋さんを営んでいます。

会社員といえば週5日勤務のイメージがありますが、あかしさんは会社員時代から複業をしていて、週5日会社員→週5日会社員(うち週2日リモート)→週3日会社員+週2日フリーランスというように、既存の働き方にとらわれず、自分の状態に合わせて働き方を何度も変えてきました。

そんなあかしさんに、働き方をチューニングすることについてお話を伺いました。

仕事は増えたけど、好きなことばかりだから辛くない

――あかしさんは現在、フリーランスで編集・ライター業をしながら、岡山で書店『aru』を経営されていますよね。

はい、2020年から東京と岡山で2拠点生活をしています。今は、1か月のうち10日ほどは岡山、20日ほどは東京にいます。岡山にいる10日間のうち、『aru』を営業しているのが6日間くらい。その6日間は、お昼から夕方まで店番をしつつ、お客様がいないときはメールの返信などの作業をしたり、本を読んだりしています。岡山にいる残りの4日間は、打ち合わせや集中したい作業をしていますね。打ち合わせや集中したい作業をしていますねあかしさんが運営する、aruの様子

――なぜ本屋さんを始めようと思ったのですか?

2020年の3月に会社を辞めてフリーランスになって、当時一緒にいたパートナーともその頃にお別れして。そのタイミングでコロナ禍がやってきたこともあり、「この先どうやって生きていこうかな」と考えるようになりました。

ちょうどその頃、岡山県の倉敷市でホステルを運営している友人に誘われて、岡山に2週間くらい滞在したんです。そしたら瀬戸内海がとても綺麗で、出会う人たちもみんな気持ちのいい人たちばかりで、「この土地ともっと深く関わりたいな」と思いました。学生時代から本に関わる仕事をしたかったこともあって、自然と「本屋さんを始めようかな」って。

「本屋さんを始めようかな」

海の近くで、本屋を始めます

――お店を経営するのは初めてですよね。不安はありませんでしたか?

あまり不安はありませんでした。むしろあのときは、何もしないことのほうが不安だったかも。コロナ禍で世の中が変わって、私自身もフリーランスになって、ただ自由だけが目の前に広がっていたので……。

そんな不安定な状況だったから、「1年後に本屋さんをオープンするぞ!」という具体的な目標が支えになりました。本屋さんのオープンに向けてやるべきことを洗い出してからは、毎日の行動が明確になって、救われたような心持ちでした。

救われたような心持ちでした。

――『aru』が進むべき道を照らしてくれたんですね。一方で、『aru』を始めたことで編集・ライター業のお仕事に使える時間が少なくなったのでは?

そのはずなんですけど、受けているお仕事の数は増えています。ずっと編集・ライター業をしてきたこともあって、駆け出しの頃よりもうまく仕事と暮らしを回せるようになってきたのかもしれません。20代半ば頃は本当にいっぱいいっぱいで、真夜中まで原稿を書くことがよくあったんですけど、今はたっぷり眠れています。本も読めているし、湯船にもゆっくり浸かれているので、余裕はありますね。

――仕事は増えたのに、なぜか昔よりゆったりできているんですね。

そうですね、バリバリ働いてはいるけど「忙しくて辛い」と思うことはあまりないです。好きなことばかりしているから、あまり「仕事」という意識がないのかも。特に岡山で生活するようになってからは地方のお仕事が増えて、月に3、4回はあちこちに出張に行くんですよ。仕事と旅行が一緒になっているみたいで楽しいです。

会社員時代、週3勤務を選んだ理由

――フリーランスになる前は会社員だったんですよね。

そうです、新卒でサイボウズという企業に入りました。サイボウズは複業OKだったので、会社員をやりつつ、複業として自分がやりたい編集・ライターの仕事も受けるようになりました。途中から週5日会社員+週末フリーランスみたいな働き方でしたね。

――それはかなり忙しいのでは?

そうなんです。忙しすぎてキャパオーバーになって、体調を崩してしまいました。それで働き方を見直さなきゃいけないなと思って、いったん複業を辞めたんですよ。忙しくなくなったことで体調は元に戻ったんですけど、「なんで複業だけ諦めなきゃいけないんだろう」「本業も複業も、どっちも減らしてどっちも続ける方法があったんじゃないか」と思うようになりました。

――「本業の勤務時間を減らす」というのは、なかなか思い至らない発想ですね。

サイボウズには、当時「働き方宣言制度」という制度があったんです。自分の希望する働き方を宣言して、チーム内で合意が取れたら実現できるというもの。でも、週3社員という形を選ぶ人は当時は少なかったような気がします。

私はブランディングの部署にいたこともあって「自分自身が週3社員になって新しい働き方を実践すれば、私も複業もできるし、会社にとってもいいアピール材料になるし、双方にとっていいのでは?」と思いました。それで会社の人に相談して、週3勤務にしてもらったんです。複業も再開して、週3会社員+フリーランスみたいな働き方にシフトしました。

――キャパオーバーによる体調不良に対して、働き方を変えることで対処したんですね。とても冷静な判断だと思います。

一言で「キャパオーバー」といってもいろいろなパターンがあると思うんです。私の場合は仕事内容や環境に不満はなく、ただただ忙しさが原因だったので、仕事を減らすことで対処できました。でも、人間関係のストレスなどで心のキャパオーバーになってしまった場合などは、もっと対処が難しかったと思います。

――なるほど。働き方を変えるとき、どのように周囲からの理解を得ましたか?

上司とたくさん話し合いました。そのときは、自分本位になりすぎないよう気を付けていましたね。最初から「私は週3じゃないと無理です」というようにこちらの希望だけを伝えるのではなく、チームの都合も聞くようにしていました。「もし今、チーム的に私の週3勤務が難しければ週5勤務のままでもいいです。週3勤務にできるタイミングがあれば教えてください」といったふうに、伝え方も工夫していましたね。

サイボウズを退職します──会社と個人の距離感を模索した5年間の軌跡

伝え方も工夫していましたね。

いっぱい失敗することで、選ぶものの精度が上がってきた

――自分の状態に合わせて働き方をチューニングするために、大切なことはなんですか?

現在の自分の状態と、自分が心地いい状態を理解しておくことだと思います。理解したうえで、どうすれば現状を理想に近づけられるか分析していく。私はキャパオーバーに気づいてから、自分が何にどれだけ時間をかけているのか、どういう状態になりたいのか、すべて書き出す作業をしました。

――書き出すことで現状と理想を把握したんですね。あかしさんは週3会社員になる道を選びましたが、会社によっては働き方をチューニングすることが難しいですよね。

たしかにサイボウズという環境だったから週3という選択肢があったけれど、選択肢がなかったら、「複業を辞めるか会社を辞めるか」の二択を迫られていたかもしれません。もしそうなっていたら、今のような働き方もしていないかも……。

――週5で働くしかない会社員の方でも、上司に相談して業務量を減らしてもらうとか、仲間に業務を分担してもらうとか、何らかの対処ができるといいですよね。あかしさんは、仕事選びで失敗することはありますか?

昔はありました。いっぱい失敗することで、「私ってこういうのが苦手なんだ」とわかってきて、選ぶものの精度が上がってきた感じです。私、ここ5年くらいの間に始めたことで、辞めたことがほとんどないんですよ。『aru』もプライベートのパートナーシップもクライアントさんたちとの関係も、ぜんぶ続いている。続くような関係性を自分で選べるようになってきたんだな、と思いますね。

――選ぶのが上手になったんですね。

本当にその感覚はあります。「仕事を選ぶのが上手になる」ことと「働き方を自分に合わせてチューニングする」ことは、つながっていると思います。

「仕事を選ぶのが上手になる」ことと「働き方を自分に合わせてチューニングする」こと

変わりたいわけじゃなくても、生きていれば変わっていく

――昔と今とで、働く時間についての意識は変わりましたか?

変わりました。20代半ばの私が今の働き方をしていたとしたら、きっともっと仕事を詰め込んでいたと思います。昔は私生活を犠牲にしてでも働くのが当たり前というマインドだったけど、今は少し忙しくなると、「あ、無理しないようにしよう」と気を付けますね。自分の中のアラートが鳴るのが早くなりました。

――キャパオーバーにならないよう、うまく予防しているんですね。予防できるようになったきっかけはありますか?

岡山の存在は大きいかもしれません。岡山で出会う人たちって、みんな穏やかな人たちばかりで。自分が取り組むことに真剣に熱中して向き合っているけれど、必要以上に人と比べたり、焦ったりしていないんですよね。瀬戸内海も穏やかで美しくて、「この景色を見る時間を作らずに生きるなんてもったいないな」って思う。そんな生活を月に10日間送っているので、東京でもその心持ちが残ったまま過ごせているような気がします。

東京でもその心持ちが残ったまま過ごせているような気がします。

――この先、生き方や働き方が大きく変わることはあると思いますか?

子どもを持つかどうかが、大きなターニングポイントになるとは思います。でも、自分だけで選べることじゃないのでこればかりはわからないですね……。

――また働き方をチューニングする可能性があるんですね。仕事の内容が変わることはあると思いますか?

変わっていくと思います。昔はどちらかといえば、「何者かになりたい」「仕事を通して自分を認めたい」といった気持ちが仕事の原動力としてあったことが否めないんです。だけど、ここ数年は自分が満たされてきた感覚があって。自分のためではなく、社会や次世代に対して何ができるのかを少しずつ考えるようになっています。今後は、社会や次世代のための仕事にシフトしていくのかもしれません。

――変わっていくことに対して、ためらいや不安はありますか?

あります。私はすごく臆病なので、「変わることがめっちゃ楽しい!」というタイプではないんです。自分や周りの人たちが幸せで、変わらなくて済むならそのほうがいい。だけど、生きている限り変わらないことなんてないですよね。私自身も20代半ばから32歳までですごく変わっているし、人からも「変わったね」って言われます。変わろうと思ったわけじゃないけど、結果としてすごく変わってきたというか。

――生きていると、望む・望まないに関わらず自然と変わっていきますよね

そうなんです。だって、生きていたらまず年齢が変わっていくじゃないですか。コロナのような不可抗力な変化もある。自分も他人も社会も、意思とは関係なく変わってしまう部分はどうしたってあります。

だからこそ、尊敬している人と尊敬し合える関係を続けるためには、お互いに同じ速度で変わらないといけないと思います。だから「誰と一緒に生きていきたいのか」を選ぶことってすごく重要ですよね。誰といるかで、自分がどう変わっていくかが決まるから。変化は怖くもあるけれど、これからも変わることと向き合い続けたいです。

変化は怖くもあるけれど、これからも変わることと向き合い続けたいです。

(取材・執筆:吉玉サキ、撮影:安井信介、編集:プレスラボ)

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/media/タイミーラボ編集部
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