私のタイミー生活

小さな工夫で「はたらく」をもっと楽しく!東大院・特任講師の櫻谷さんに、仕事のやりがいを見出すコツを聞いてみた

  • 公開日:
  • 更新日:
小さな工夫で「はたらく」をもっと楽しく!東大院・特任講師の櫻谷さんに、仕事のやりがいを見出すコツを聞いてみた

目次

せっかくスポットワークやアルバイトをするなら、お金を稼ぐだけでなく、楽しくやりがいを持って働きたいと考える人も多いと思います。そのためにはどのような工夫ができるでしょうか——。

今回はそんな疑問を解消するために、働き方を自分なりに工夫する手法「ジョブ・クラフティング」の専門家、櫻谷あすかさんにお話を聞きました。櫻谷さんはジョブ・クラフティングの研究を10年ほど続け、現在は東京大学 大学院医学系研究科 特任講師をしています。研究の一環として、企業向けの研修やセミナーなどもしています。

ジョブ・クラフティングとはどのような考え方なのか、自分の仕事にどう取り入れたらいいのか。また、雇い手側としてできる工夫とは。タイミーでの仕事によりやりがいを見出すためのコツを、たっぷり教えていただきました。

▼プロフィール
東京大学大学院 医学系研究科 特任講師 櫻谷 あすか 氏

東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了、および同研究科健康科学・看護学専攻博士課程修了。公衆衛生学修士、博士号(保健学)取得。2014年から職場のメンタルヘルスをテーマにジョブ・クラフティングの研究を続ける。2022年7月より現職。2022年第30回日本産業ストレス学会優秀演題賞(メタバース勤務と心の健康および仕事のパフォーマンスとの関連の検討:横断研究)。

仕事にまつわるちょっとした工夫「ジョブ・クラフティング」

——あまり聞き慣れない言葉ですが「ジョブ・クラフティング」とはどのような考え方か教えてください。

ジョブ・クラフティングとは、わかりやすくいうと「やりがいを持って働けるように、自分自身の働き方を工夫する」ことです。具体的には、「朝のうちに頭を使う仕事を終わらせて、すっきりとした気持ちで仕事を進める」「仕事で困ったことは早めに相談する」「職場では笑顔で挨拶することで、心地よい人間関係を築く」など、気持ちよく、または効率的に仕事を進めるための工夫があります。

「働き方を工夫する」というと、「転職して仕事や職場を変えよう」といった考えが浮かぶ方もいるかもしれません。それも広く見ればジョブ・クラフティングの一部ですが、必ずしもそうした大きな挑戦や変化が必要なわけではありません。

「笑顔で挨拶する」だけでも、職場の人と会話がはずむようになったり、関係性がよくなったりしますよね。そうした小さなジョブ・クラフティングの積み重ねが、より楽しく、やりがいを持って働くことにつながるんです。

——ジョブ・クラフティングにはどのようなものがあるんですか?

ジョブ・クラフティングは、大きく3つの種類にわけられます。

ジョブ・クラフティング

出典:仕事をもっと楽しく──ジョブ・クラフティングでより前向きに、やりがいを感じて働く人を増やしたい

1つ目は、仕事の中身や作業の順番を変えたり、工夫したりする「業務クラフティング」です。具体例としては「仕事の前に自分がやるべきことをリスト化する」があります。作業の内容や手順を一度メモに書き出して優先順位を整理することで、焦らず余裕を持って動くことができます。

2つ目の「関係性クラフティング」は、仕事に関わる人との関係性に工夫を加えること。すぐにできそうなのは「積極的に感謝を伝える」です。誰かの作業に対して、それが仕事上の当然の行為であっても、「ありがとう」と伝えてみます。言われた相手は嬉しい気持ちになりますし、職場の雰囲気も明るくなって、仕事がスムーズに進みやすくなるかもしれません。

3つ目は「認知的クラフティング」。少しわかりづらいですが、これは作業の意味や目的の捉え方を工夫することです。

たとえば、飲食店でのお皿洗いを頼まれたとします。ただの作業として捉えると「大変な仕事だ」と思うかもしれませんが、「お客様が気持ちよく食事をするために、お皿を綺麗にしている」と捉え直すことができれば、楽しさややりがいを感じやすくなるかもしれません。あるいは自分のお店を持ちたいと思っている方なら、「将来のためのスキルや経験値を身につけるため」と考えると、大変でもやる気が起きるのではないでしょうか。

ジョブ・クラフティングには「業務」「人間関係」「認知」の3つがありますが、人によって得意なものは違います。ですから、同時に3つすべてに取り組むというよりは、やりやすいものから試してみるのがいいと思います。いろいろと試してみて、自分に合うものを見つけていくのが大切です。

——挙げていただいた例を聞くと、無意識のうちにやっていたことも多いように感じます。

そうなんです。企業向けの研修でも「ジョブ・クラフティングをしていますか?」と聞いてみたところ、「やっていない」と答える方が多くいます。しかし、その後グループワークで自分の仕事のコツを振り返ってもらうと、自然といろんな工夫をされていることに気づかれるんです。

ジョブ・クラフティングは、必ずしも新しいことに取り組むことではなく、無意識に自分がやっていた工夫を自覚することも大切です。それができれば「意外と自分はいい働き方ができているな」と自信を持てたり、「さらにいろいろな工夫をしてみよう」と思えたりします。

さらにいろいろな工夫をしてみよう

タイミーでも実践しやすいジョブ・クラフティングの例

——タイミーでの働き方に当てはめた質問をさせてください。スポットワークでは、その職場の指示通りに作業することが求められるケースも多いと思います。その場合、1つ目の「業務クラフティング」は取り組みづらいと考えていいでしょうか?

作業が細かく決まっていたり、定型業務の多かったりする職場はそういう傾向があるかもしれませんね。「マニュアルが決まっているから業務クラフティングはできない」と感じられる方もいるかもしれません。しかし、いくらマニュアルがあるからといっても、一挙手一投足がすべて決められていることはあまりなく、人が自分で判断する必要や、工夫する余地は残っている場合が多いと思います。

たとえば、コンビニのレジ打ちの手順は決まっていたとしても、商品を並べる際にバーコードを全部こちらに向けておく工夫はできるはずです。これも、バーコードの読み取りをスムーズにするための立派なジョブ・クラフティング。どんなにマニュアル化された仕事も「工夫できる余地はあるはずだ」と考えるのがいいと思います。

——では、2つ目の「関係性クラフティング」はどうでしょうか。タイミーの場合、初めての職場で初めて会った人たちと働くケースも多いです。

初めて会った人と、いきなり流暢に会話するのはハードルが高いと思います。そうした場合は、まず「相手のことを観察してみる」のはいかがでしょうか。雑談が上手い方は、相手のパーソナリティを知るのが上手といいます。相手の性格や興味関心を知ることができれば、会話の糸口が見つかるかも知れません。

あとは、「相手の尊敬できるところを探す」もいいですね。たとえば、性格が合わない人がいたとしても、その人のすべてが嫌というわけではないと思います。「性格は苦手だけど、この作業は本当に上手だな」といったことを意識的に見つけられると、自分のなかのその人の捉え方が変わり、関係性も変わっていくかもしれません。

係性も変わっていくかもしれません。

——「認知」と「関係性」のクラフティングを同時にやっているようなものですね。「相手の尊敬できるところを探す」は、いろんな職場でいろんな人と出会えるタイミーにぴったりなジョブ・クラフティングかもしれません。

たしかに、タイミーは初めての出会いが多かったり、経験の幅が広かったりすると思うので、お手本にできる人を見つけやすいかもしれませんね。どんなジョブ・クラフティングをしたらいいか思いつかない人は、まずはお手本になる人を見つけて真似をしてみてはいかがでしょうか。

ジョブ・クラフティングによって職場の生産性もアップする

——ジョブ・クラフティングは働き手のやりがいを生むものですが、職場側には何かいい影響があるんでしょうか?

企業を対象とした研究によると、ジョブ・クラフティングによって従業員のワーク・エンゲイジメント(働く人の仕事のいきいき度)が高まることがわかっています。また、ワーク・エンゲイジメントの平均値が高い職場は、生産性が高い傾向もあります。

ここで重要なのは、ワーク・エンゲイジメントの平均値が同じであっても、一部の人だけ数値が高くて他の人は低い「ばらつきの大きい組織」よりも、全体的に数値が高い「ばらつきの小さい組織」のほうが、生産性が高い傾向にあるということです(※)。

※『従業員のポジティブメンタルヘルスと生産性との関係』黒田 祥子/山本 勲/島津 明人/ウィルマー B. シャウフエリ、2021

「ばらつきの小さい組織」

——良い職場にするためには、一部の人ではなく、全体的に仕事のいきいき度を高める取り組みが大事だということですね。

その通りです。例えば、正社員とアルバイトの区別なく、その職場で働く人たち全員が積極的にジョブ・クラフティングできるような組織風土を作るのも大切だと思います。

そのためにできる工夫としては、まずは管理者やお店のマネージャーの方からジョブ・クラフティングに取り組むのがいいかもしれません。日々の仕事を振り返り、どうすればより心地よく働けるのかを自分なりに考えてみる。その姿を見て、他の方々もやってみようと思えるのではないでしょうか。

あとは、朝礼などがある職場なら、仕事の工夫やコツについて話し合う機会を設けるのもいいですね。無意識にやっていて気づいていなかったことも、人と話すことによって言語化できたりもします。そうしたことの繰り返しで、少しずつ、働き手がジョブ・クラフティングをしやすい職場ができていくのではないかと思います。

——ジョブ・クラフティングの考え方から、働き手と雇い手目線のコツまで、幅広く学ばせていただきました。少しでも多くの人が実践して、やりがいを感じられるといいですね。

そうですね。ただ、大事なのは、全員が全員やりがいを求めて働いているわけではなく、ジョブ・クラフティングをしないといけないわけでもないということです。仕事に何を求めているかは人によってバラバラですし、一口に「やりがい」といっても、楽しさ、使命感、責任感などいろいろなものと関係します。自分にとって心地よい働き方をすることが大切だと考えています。

その上で、仕事に悩んでいたり、もやもやした気持ちがある人には、ぜひ取り組んでみてもらいたいですね。ほんのちょっとの工夫で、気持ちが前向きになったりして、少しでも働くことが楽しく感じられたらいいなと思っています。引き続き、ジョブ・クラフティングの研究と普及を通じて、生き生きと働ける人が増えるようなお手伝いをしていけたら嬉しいです。

いますぐTimeeをダウンロード

  • App store からダウンロード
  • Google Play で手に入れよう

/media/タイミーラボ編集部
タイミーラボ編集部

タイミーラボは、株式会社タイミーによるオウンドメディアです。

https://lab.timee.co.jp/

Share

すぐ働けるバイトを探してみる
タイミー は「この時間なら働ける」人と
「この時間だけ人手がほしい」事業者をつなぐ
スキマバイトサービスです。
  • 私のタイミー生活
  • 小さな工夫で「はたらく」をもっと楽しく!東大院・特任講師の櫻谷さんに、仕事のやりがいを見出すコツを聞いてみた