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古民家でのゆったりとした暮らしを発信している「OKUDAIRA BASE」は、登録者数36万人の人気YouTubeチャンネル(2024年4月現在)
チャンネルを運営している奥平眞司(おくだいら・まさし)さんは、動画の制作をしながらキッチン道具のデザイン製作にも携わっています。
仕事が忙しいはずの奥平さんですが、毎日海でスキムボードをしたり、じっくり手間暇かけた料理を作ったりと、暮らしを楽しんでいる様子。
そんな奥平さんに、時間を上手に使うコツや時間への向き合い方を伺いました。
月に15万円あれば楽しく暮らせる。就活しないことを選んだ学生時代
——暮らしを楽しむようになったきっかけを教えてください。
実家が愛知なんですけど、大学に進学して、県内の実家から遠い街で一人暮らしを始めたんです。そこはすごい田舎で、本当に海と山しかないんですよ。
お店もアミューズメント施設もないから、必然的に家にいる時間が増える。それで暇つぶしに、浜辺に落ちていた流木とかを使って、電気スタンドやちょっとした家具を作るようになりました。
――DIYに目覚めたんですね。
はい。インテリアにこだわったら家に友達を呼びたくなって、料理でおもてなしするようになり……。その延長で暮らし全般が好きになった感じです。その頃からInstagramでインテリアや料理について発信するようになって、取材されたこともありました。
――発信活動を始めたときは愛知にいたんですね。いつ頃上京したのでしょう?
流木で家具を作るようになってからインテリアやデザインに興味を持ち、大学卒業後、渋谷にあるデザインの専門学校に進学しました。それで、入学と同時にYouTubeを始めたんです。当時は学校の課題とYouTubeとアルバイトと、充実した時間を過ごせました。
――忙しくはありませんでしたか?
学校の課題もYouTubeもとにかく楽しかったので、忙しいとは感じませんでした。好きなことに熱中していると時間があっという間に経ち、あまり忙しいとか辛いとか思わないんです。
――逆に、好きじゃないことにはどう向き合ってますか?
好きじゃないことはなるべく避けてきています(笑)。好きじゃないことに時間を使うと心がザワザワしちゃうので……。
――心を守ることが上手なんですね。ところで、学生時代はどんなアルバイトをしていたのでしょう?
デザインの学校は課題が多く、課題がある時期はあまり働けないので、Uber Eatsや登録制の派遣バイトなど、時間の融通が効く働き方をしていました。
あと、なるべく一人でできるバイトを選んでいましたね。
――なぜ、一人でできるバイトを選んでいたんですか?
大学生のときにピザ屋さんでバイトをしていたんですが、店長が後ろに立っていると、緊張するタイプなので視線を感じてうまく動けなかったんですよ。だから、一人でできる仕事のほうが向いてるなと思って。
――ご自身の特性をよく理解しているんですね。卒業後はアルバイトをしながら発信活動を続ける道を選んだそうですが、就職活動はいっさいしなかったんですか?
就活もせず、インターンにも行きませんでした。将来はプロダクトデザインや空間デザインの方向に進みたいなと思いつつ、もともとのんびりな性格だから「そんなに焦らなくていいかな」と思って。また、デザイナーとして就職するとなるとハードワークな会社が多く、自分の暮らしを楽しめなくなってしまいそうだとも思っていました。
フリーターしながら発信活動を続けて、自分のペースでゆっくりやっていくつもりでした。そしたら卒業間際にYouTubeのある動画がヒットして、そのままYouTubeの道を歩み始めました。
――就職しないことに不安はありませんでしたか?
当時アルバイトだけで生計を立てられていたので、不安はありませんでした。『OKUDAIRA BASE 自分を楽しむ衣食住: 25歳、東京、一人暮らし。月15万円で快適に暮らすアイデアとコツ』でも書いているのですが、月に15万円あれば楽しく生きていけるんですよ。暮らしが趣味だから、あまりお金がかからないです。
時間を有効に使うコツは早起きとルーティン
――時間を大切にするためにやっていることはありますか?
早起きをすることです。学生時代、友達とサーフィンに行くとき、「朝5時に集合ね」と言われて、「早っ!」ってびっくりしたんですよ。なんとか起きて海に行って、サーフィンして帰ってきたらまだ午前10時で。時間を有意義に使えたのが嬉しくて、それから早起きするようになりました。
――早起きすると、一日の時間を有効に使えそうですね。
はい。あとは毎日のルーティンを決めて、だいたいその通りに生活するように心がけています。朝は日の出とともに起きて、朝ごはんを作って食べて、毎朝の運動で海へスキムボードしに行きます。帰ってきてもまだ9時なので、そこから仕事開始。9時から17時まで仕事をして、夜はお風呂に入ってゆっくりご飯を作って食べて、10時くらいに寝ます。
――かなり早起きですが、お仕事中に眠くなったり、集中力が途切れたりすることはないのでしょうか?
眠くはならないです。集中も、できていると思います。だいたい1時間仕事したら、ちょっと縁側を歩いたり、コーヒーを淹れたりして休憩しています。
あと、集中力が切れてきたら小さな家事をして気分を変える。仕事の合間に小豆を火にかけておいて、次の休憩にはあんこが炊けてる……みたいな。
――気分転換になるし家事も片付くし、一石二鳥ですね! 一方で、時間を大切にするためにやらないことは?
スマホを見すぎないようにしています。スマホに気を取られると、本当に好きなことを見失ってしまう気がするので……。
だから最近は引き出しの中に充電コーナーを作って、スマホはなるべくしまっています。最近、SNSでも見たくない情報が自然と入ってきてしまい、やりすぎると心によくないので、投稿はするけど閲覧はほどほどにしたりします。
――ストレスコントロールが上手なんですね。
まさに「なるべくストレスを受けないこと」を優先して生きています。たとえば、予定を詰め込みすぎないように気を付けたり。時間に余裕がないと心がザワザワして仕事に集中できなくなるので……。
ストレスを感じると身体に異変が出やすいので心を大切にしたいと思っています。
――なるほど。一方で、時間を持て余して退屈してしまうことはありますか?
常に何かしらしていたいタイプなので、時間を持て余すことはないです。ちょっと時間が空いたら、コーヒー豆を焙煎したり、整理整頓をしたり、何かしら動いています。
――フットワークが軽いんですね。
何かをやりたいと思っていたのにやらなかったときって、「やればよかった!」という後悔がすごいんです。だから後悔しないために、すぐ動くようになりました。
今でもたまに、だらだらしちゃって1日の終わりにやればよかったと後悔することはありますが..….でも、自分を責めないためにも「1日の中で何か一つできたらOK」と思うようにしています。
働く時間も場所も内容も、すべての夢が叶っている
――先ほど「月に15万円あれば楽しく暮らせる」とお話しされていましたが、奥平さんはお金よりも時間を大切にしたい人という印象があります。いつ頃からそう考えるようになったのでしょう?
一人暮らしを始めた頃からです。カラオケやボーリングなどお金がかかる遊びも楽しいけれど、自分は家で掃除や料理をしているほうが好きだった。それで、お金がなくても暮らしを楽しむことができるんだって気づきました。
――家族ができると何かとお金がかかりますが、結婚した今でも、「お金よりも時間が大事」という価値観は変わりませんか?
いつか子供が生まれたら変わってくるかもしれませんが、今のところは時間を重視したい気持ちがあります。お金は必要だし、かと言って時間がないのは心によくないし、ちょうどいいバランスを探りたいですね。うちはパートナーもYouTubeをやっていて、自分の時間を大切にしたい人なので、時間に対する考え方は夫婦で共通していると思います。
――夫婦の価値観が合っているんですね。ところで、奥平さんにとっての「理想の働き方」とは?
僕はなによりも環境を重視します。自分にとって精神的にしんどい空間だったら、仕事が手につかないと思うんですよ。僕は家が大好きなので、自宅で家事をしながら仕事する今のスタイルが理想どおりです。
――ご自宅が本当に大好きなんだというのが伝わってきます。「働く時間を減らしたい」という気持ちはありませんか?
「働いてる」って感覚があまりないので、時間を減らしたいとは思わないのかもしれないです。もしも好きじゃない仕事をしていたら、「労働時間をなるべく減らしたい!」って思うと思います。
――働く時間も場所も内容も、ご自身の理想が叶っているんですね。
理想に近い気がします。最初はYouTubeの動画制作に専念していたんですが、動画内でデザインの話やキッチン道具の紹介をしていたら、そこからプロダクトデザインの仕事の話が舞い込んできました。「好き」や「やりたい」という気持ちは発信することで叶うってよく聞きますが、本当にそうなのかもしれません。
――動画制作にキッチン道具デザインと、とてもお忙しそうですが、やっぱり忙しいとは感じないのでしょうか?
はい。よく「大変そう」とか「忙しそう」って言われるんですけど、僕は好きでやっていることなので、そんなに忙しさは感じていません。
――「好きじゃない仕事」が来ることはないのでしょうか……?
自分がワクワクしないご依頼や、スケジュールがパンパンになってしまうご依頼は受けないようにしているんです。自分が心から好きで発信していないと、中途半端になり視聴者さんにもクライアントさんにも失礼になってしまうので。
いつでも寄り道できるよう、スケジュールに余裕を持っておく
――Z世代を中心に「タイパ(タイムパフォーマンス)」という概念が浸透していますが、タイパについてはどう思いますか?
時間は大切だけど、僕はそこまでタイパを重視して行動することはないです。僕は無駄な寄り道が好きなんですよ。あえて遠回りして知らない道を歩いたら、美味しそうなお店を見つけたりとか。そういう出会いや発見が好きなので、あまり時短にはこだわっていなくて、「時間を無駄に使っちゃったとしても、それもまたOK!」みたいなタイプです。
――時間に余裕があるからこそ、楽しい無駄遣いもできるんですね。
今日もこのインタビューの前に散歩していたら、すごくいいお魚屋さんを見つけたんですよ。
―お魚屋さん……! お魚、買ってきたんですか?
はい。アジがたくさん入ったパックが300円で、つい買っちゃいました。今リュックに入っています(笑)。予定をぎちぎちにしていないと、ちょっとした散歩や視野が広がったりと楽しいです。
――素敵ですね! お仕事をする上でも、あまりタイパは意識しないのでしょうか?
そうですね。タイパを意識して撮影や編集をすると、せかせかした雰囲気が動画ににじみ出ちゃうと思うんですよ。だから、あまり作業時間を短くしようとは考えていません。ただ、「17時に仕事を終わらせる」と決めているので、その目標に向けてグッと集中して仕事しています。
――17時に仕事が終わらないことはないのでしょうか?
たまにあるけど、そんなに遅くまでは仕事しないです。「今日は17時を過ぎちゃったから、次からは気をつけよう」みたいな感じです。依頼された仕事は納期が決まっているので、余裕を持ったスケジュールを組んで、焦らなくても納期を守れるようにしています。
――素晴らしいですね。今後、やりたいことはありますか?
YouTubeを続けつつ、デザイン関係の仕事の幅を広げていきたいです。今はキッチン道具を作っていますが、暮らしに関係するさまざまな道具を作っていけたらいいな。たまに「奥平さんの道具を使うようになってから暮らしが楽しくなりました」と言っていただけることがあるので、引き続き、そう言ってもらえるようなものづくりをしていきたいです。
(取材・執筆:吉玉サキ、撮影:塩川雄也、編集:プレスラボ)
- タイミーラボ編集部
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