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タイミートラベルは、地方での仕事や生活の体験を通じて、滞在費を賄いながら第二の故郷を見つけることができるサービスです。2019年10月のサービス開始以来、これまで数多くの地域の事業者とワーカーさんとの出会いが生まれています。
そこで今回は、実際にタイミートラベルに参加した方々をお呼びして座談会を開催。タイミートラベルに参加したきっかけや参加後の地方との関わり方について伺いました。
タイミートラベルの基本情報は、下記の記事を参考にしてみてください。
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青木さん
立命館大学 食マネジメント学部 2回生。農業体験を通じて生産者と学生をつなげる学生団体「カノール」代表。タイミートラベルに2回参加。座談会はオンラインにて参加。
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富田さん
建築業や飲食店勤務を経て、現在はフリーランスで企業の採用支援や研修サポートを行う。2024年3月に東京都奥多摩町で町おこしの会社を起業予定。タイミートラベルには4回参加。
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入江さん
東京都出身。2023年に宮崎県都農町(つのちょう)でのタイミートラベルに2回参加し、同年7月に移住。現在は一般社団法人ツノスポーツコミッション所属の地域おこし協力隊で都農町の規格外・廃棄作物を有効活用する活動に従事。「整理収納アドバイザー」としても活動中。
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小松原さん
都農町の地域振興に関わる、一般社団法人ツノスポーツコミッションの事業統括責任者。都農町でのタイミートラベル実施においては、コーディネーターとして、受け入れ事業者の確保や参加者のサポートを担当。
タイミートラベル参加のきっかけ
—— 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずは今回参加されているみなさまの自己紹介とタイミートラベルへ参加したきっかけを教えてください。
先輩からのオススメもあり、九州の生産地を見てみたかった(青木さん)
青木さん:立命館大学 食マネジメント学部 2回生の青木です。あまり聞き慣れないと思いますが、食マネジメント学部では経済学や経営学を基盤としながら、食の安全や歴史、栄養学など食にまつわる分野を総合的に学んでいます。
そして同じ学部生を中心とした学生団体「カノール」の代表も務めています。こちらでは「人との繋がりの縁」という意味を込めた「縁農」をコンセプトとして、学生と農家さんをつなぐプラットフォームを運営し、学生が気軽に農業に携われるよう日々活動中です。
—— もともと食に興味があったんですね。タイミートラベル参加のきっかけはなんだったのでしょう?
青木さん:幼い頃から食べることが好きだったので(笑)。参加のきっかけは、学生団体の先輩からの紹介です。「こんなサービスがあるよ」と言われホームページを見てみたら、私がまだ行ったことのない九州の農家さん(福田果樹園)の体験を見つけました。日頃からいろんな生産者の現場を見てみたいと思っていたのですが、九州など遠い地域は交通費の心配もあり、なかなか足を運べていませんでした。
でも、タイミートラベルは案件によっては交通費の補助があり、熊本県にある福田果樹園さんも交通費補助の対象だったため、思い切って応募することにしたんです。それに福田果樹園さんは農家民泊もされていて、ご飯が美味しいと聞いていたのでそれも楽しみにしていました(笑)。
福田果樹園で仕事体験をする青木さん(提供写真)
自分のスキルを地域のために活かしたかった(富田さん)
富田さん:現在はフリーランスで企業の採用支援や研修サポートをしている富田と申します。私はこれまでイタリアンのシェフなど10年以上飲食の仕事をした後、人材系の会社へ転職し、独立をしました。
地方への興味は、前職の出張で訪れていた高知県での経験が大きいです。その時に担当していたのは、廃校を活用したコールセンターでした。20代〜60代の方々に向けて研修をしていたのですが、みなさん「働く場所がないからここに来た」「みんな仕事がないから関西や東京へ行ってしまう」と嘆いていたんです。そんなお話を聞いて、地方や地域に何か貢献することはできないものかと考えていました。しかし、当時は会社員だったこともあり、深くは関与できない......とモヤモヤしていたんです。
そして2022年11月に独立してフリーランスに。やっと自分のやりたいことをやろう!と思ったのですが、当時はまだ地域へつながりやツールも少なく、どうやって取り組んでいこうかと悩んでいました。そんな時にたまたまタイミートラベルで鹿児島県南九州市のタノカミステーションの募集を見つけたんです。
タノカミステーションの「食をつうじて地域から新しい働き方を提案する複合施設」というコンセプトと「特産品を使ったメニュー開発」の仕事を見た瞬間に、ピンときて「今までの自分の経験を活かせるのはここだ!」と応募しました。
タノカミステーションで仕事体験をする富田さん(提供写真)
行ったことのない県へ行き、大人の社会科見学がしたかった(入江さん)
入江さん:2023年に東京都練馬区から宮崎県都農町(つのちょう)に移住した入江です。私はみなさんのように何か志があったわけではなく、これまで体験したことのない形での旅行がしたいと思い参加しました。2022年の年末に1年を振り返った時に、一番楽しかったことが親との旅行だったため、旅行の機会を増やしたいと思ったんです。
もともと旅行好きが高じて旅行代理店に勤務していたこともあり、一般的な美味しいものを食べて名所を見てまわるという旅行は数を重ね、そろそろ卒業してもいいかなと考えていました。そのため何かプラスアルファな体験ができる旅行を探していました。
そんな時にスマホのポップアップで出てきたのがタイミートラベルでした。農業=プロフェッショナルの仕事という印象があったのですが、そういった農業に素人の自分が参加できるんだということにワクワクしたのと同時に、47都道府県ある中で訪れたことのなかった宮崎県の農家での募集ということもあり、これはチャンスだと都農町のスイートピー農園(Garden Works)へ応募しました。
▼入江さんの都農町移住にまつわる記事はコチラをご覧ください
実際に参加してみて、印象に残っていること
—— 参加理由は、みなさんバラバラですね。改めてどこに興味を持つかは人それぞれなんだなと感じることができました。では、実際にタイミートラベルに参加してみて、印象に残ったことを教えてください。
全身筋肉痛。農家さんのすごさを実感した(青木さん)
青木さん:私はタイミートラベルに2回参加して、熊本県天草郡苓北町(れいほくまち)の福田果樹園さんと森田農園さんでお手伝いをしました。福田果樹園さんでは無農薬野菜の収穫と出荷、森田農園さんではレタスの収穫を手伝わせてもらったのですが、収穫した野菜を入れる箱がたくさんあって長時間運んでいたら全身筋肉痛になってしまったのが印象に残っています(笑)。農家さんの仕事ってすごいんだなと身をもって体験することができました。
あとはたくさんの方と交流ができたことも思い出深いです。福田果樹園の福田さんの幼馴染の方が手作りのお菓子を振る舞ってくれたり、苓北町のいろんな農家さんとお話しさせてもらったり、農家さんご本人から聞けないことを家族目線で話してもらったりと、様々な人を通して苓北町の農業について知れたのがとても面白かったです。いくつかの農家さんとは私が所属するカノールでも農業ボランティアの訪問先として継続して交流をさせてもらっています。
—— 交流を通して、たくさんの農家さんとつながれたのですね。
富田さん:私は仕事柄、学生と面談をする機会が多いのですが、「やりたいことが見つからない」という子が多いんです。でも、やりたい環境をつくるのって誰かといったら、自分なんですよね
そういった意味で、青木さんの行動力と継続力は素晴らしいですし、こういう学生や若者が増えてほしいなと思いました。
タイミートラベルの経験が、起業の後押しになった(富田さん)
—— 富田さんは、タイミートラベルに4回参加されていますね。その中でも印象に残っている出来事はありますか?
富田さん:実は2024年の3月に仲間たちと起業を予定しているのですが、その後押しになったのが、先ほどもお話した鹿児島県南九州市のタノカミステーションでの体験でした。
タノカミステーションを運営している事務局長は私と同世代ということもあり、彼とはたくさんのことを話しました。一度県外に出てUターンという形で地元の南九州市に戻った話やこれからの施設に対する思いなど、どの話も本当に刺激になったんです。彼と話をする中で、自分がやりたいと思っていた地域への貢献をここまで大規模に実践している人がいる。じゃあ自分はどうするんだ?と自分の動き方を問い直す機会になりました。「誰かがやってくれると思ったら、現状はいつまでも変わらない。自分が変える側になるんだ」と決心して、起業に向けて一歩踏み出すことができたんです。
その他にも自分の第二の故郷と言うのは厚かましいのですが、純粋にファンになったのは山形県西川町にある月山トラヤワイナリーです。ここではぶどうの収穫やワインの仕込み作業をお手伝いさせてもらったのですが、ワインづくりの工程を知ったり体験したりすることで仕込んだワインに愛着が湧くようになりました。
愛着を持つと、不思議なことに「誰かに伝えたい!知ってほしい!」という気持ちが湧いてくるんですよね。私は普段からタイミーを活用して働いているのですが、タイミートラベルで稼いだお金を使って月山トラヤワイナリーのワインを友人にプレゼントしました。「ほいりげのカベルネ・ソーヴィニヨン」という1年で550本しかつくることができないワインがあるのですが、それを会社を立ち上げる仲間と開けることができたのも良い思い出です。
まだまだ話したいことはたくさんあるのですが、これまでにタイミートラベルで訪れた鹿児島、京都、山形、どこの地域の方ともいまだにつながりが持てているのが本当に嬉しいですね。
私はこっち側で生きていきたいと思えた(入江さん)
私は宮崎県で2回タイミートラベルで体験に行かせてもらったのですが、印象に残っているのは「人のあたたかさ」です。
受け入れてくださる農家や事業者の方からすれば、私みたいな短期間しか働かない人のために色んな準備をするのって大変だと思うんです。でも、スイートピー農家の細野さんは毎日のお昼ご飯を気にかけてくれたり、ご家族がお菓子を持って畑に来てくれたり、ハウスの中から選ばせてもらった50本のお花を花束にして、私たちの実家に送ってくださいました。
2回目に参加したお茶農家の森本さんのところにお邪魔した際には、私がお昼ごはんを買いそびれてしまっても「今日はうちで一緒に食べなさい。明日からも一緒にお昼ご飯を食べるよ」と、まるで家族のように接してくれたんです。
たった1週間しか滞在しないよそ者のために、なんでこんなに優しくしてくれるのだろうと感動したのを今でも鮮明に覚えています。
—— きっと入江さんも訪れた地域の方々に馴染んでいたのでしょうね。
入江さん:一緒にタイミートラベルに参加していた大学生に「入江さん、もう住んだら?」と言われてハッとしたのですが、それくらい自分も自然体になれていたんですよね。
小松原さん:入江さんは自らどんどん行動して、自転車でどこまででもいっちゃうようなタイプで私も驚きました。滞在計画に関してかっちり決めた方が良い人もいるのですが、入江さんの場合は予定を決めすぎない方が良さそうだと判断しました。
実際に入江さんたちは地元のサーファーと出会い、翌日にその方からサーフィンを教わるなど、かなり自由に町の人と交流している印象でしたね。
入江さん:私は色んなことを全部見てから決めたいタイプで、当初は移住願望もありませんでした。でも、滞在4日目くらいに「ここの土地が自分にとってベストになるのかもしれない」とふと思ったんです。人のあたたかさやゆったりと流れる時間に心が洗われて、私はこっち側で生きていたいと思いました。
地域の受け入れ体制について(小松原さん)
—— みなさん貴重な体験をされたんですね。では、受け入れ体制について都農町のコーディネーターをされている小松原さんに伺いたいのですが、人と地域をつなぐ側の目線で気をつけていることはありますか?
小松原さん:地域とつながりたいと希望を持ってくれるタイミートラベルの参加者がたくさんいる中で、コーディネーターとしてどうフォローできるのか、受け入れ先の事業所を決める時は慎重になりますね。だからこそ、「よく来てくれました」と参加者を受け入れてくれる事業者を選ぶようには心掛けています。
やはり田舎なので、閉鎖的な部分はあるんです。私自身も移住者ですが、自分たちが移住して関わり合うことで地元の人が変わっていく場面を何度も目にしました。今はちょうど町が変わりつつある時だと思っています。
私たちが行う移住支援や関係人口づくりのための動きを、事業者は全て理解してくれないかもしれない。それでも「一緒に事業をしたい、お手伝いをしたい」と言ってくれる人が来てくれるんだから一緒に受け入れませんか?一緒にご飯を食べておしゃべりしませんか?と話し合いを重ねています。農家さんは「どういう人が来るか分からないから不安だよ」と言う方も多いんですが、タイミートラベルで来られる参加者と一緒にご飯食べると、同じ釜の飯を食うとはよく言ったもので、やっぱり仲良くなれるんですよね。
そういった一つひとつの積み重ねから、少しずつオープンな地域にしていければと思っています。
—— コーディネーターのみなさんが、参加者の受け入れてもらいやすい環境を整えてくださっているのですね。
参加して変わったこと、これからの挑戦について
—— 最後になりますが、タイミートラベルの参加を通して、ご自身に起きた変化やこれから挑戦したいことについて教えてください。
タイミートラベルでつながった縁を、学生団体でも大事にしたい(青木さん)
青木さん:タイミートラベルで2か所の農家さんにお世話になり、さまざまな想いやプライドを持ってお野菜を育てていることを肌で感じることができました。それと純粋に人と関わるのってこんなに楽しいんだなと感じることができ、カノールの活動へのモチベーションにもつながっています。
実際にカノールの活動で2回苓北町を訪れているのですが、いつも福田果樹園の福田さんが運営している民泊を利用させていただいているんです。こんなに深い付き合いをさせてもらっているのもタイミートラベルのおかげです。これまでカノールは関西圏での活動が中心だったのですが、今後はいろんな地域の農家さんとの縁をつくり、活動範囲を全国に広げていきたいと考えています。
体験を通してみんなで見守る宿をつくり、少しでも地域に興味を持ってくれる人を増やしたい(富田さん)
富田さん:私は当初漠然と地域のために何かしたいという思いだけで走ってきましたが、タイミートラベルで地域の人と関わりや得た知識、関係性が自分の糧や武器になっています。
現在、起業予定の仲間と奥多摩で空き家を活用した宿泊事業を計画しているのですが、実はタイミーで訪れた地域や宿が、いま手がけている宿ブランド『巡や』のコンセプトづくりの参考になっているんです。
『巡や』では体験を通して、また来たくなる宿を目指しています。例えば、お客様には地元奥多摩の食材をレシピを見ながら作ってもらう。他にも体験やちょっとしたお仕事を通して、ただ消費するだけではなく積極的に関わり合いを持てる場所にしていきたいです。私もタイミートラベルでのお手伝いの経験を通して、地域の魅力を見つけることができました。宿泊者にも同じような体験をしてもらい、もっと地域に関わりたくなるような仕組みにしたいんです。
これはまだ構想段階なのですが、タイミーを活用して奥多摩のファンづくりができるのではないかとも考えています。例えば、古民家再生の仕事をタイミーのワーカーさんにお願いして、奥多摩に関わりを持ってもらう。手伝いに来てくれたことをきっかけに、奥多摩に興味を持って仲間になってもらう。みんなで関わって、みんなで見守っていく。そうすることで関係人口が増えていく、そんな宿を計画しています。
まずは奥多摩からのスタートになりますが、いずれは47都道府県とつながりを持てるブランドにしていきたいです。これまでたくさんのつながりを頂いてきたので、今度は私がつながりを提供できる側になれるよう頑張っていきます。
不思議なくらい自然にとけ込めた都農町の魅力を、多くの人に知ってもらいたい(入江さん)
入江さん:わかりやすい大きな変化は「移住」をしたことです。しかし、それ以上にタイミートラベルのようなきっかけ次第で、これまで訪れたことのない場所とつながりを持てる、住むことができるということを肌で感じられたのは、固定観念が大きく変わる体験となりました。可能性と選択肢が増し、人生の自由度が無限になったような感覚です。
「移住しました」と周りに言うと、「すごい決断をしたね」「勇気があるね」と言われるんですけど、自分の中ではそんなに一世一代の決断をした感じはしなかったです。きっとそれは都農町の人たちが、自然な流れで色んな人を紹介してくれたからだと思います。1週間の滞在とは思えないほどたくさんの人をつないでくれて、面倒を見てくださって。移住した後も一人という感じが全然しなかったんです。
都農町の人たちには「東京に比べたら何もないでしょう」と言われるのですが、私からするとなんでもあるのが都農町です。食べ物も美味しいし、魅力的な飲食店も多い。24時間営業しているホームセンターもあるので、住むのにも困ることは全くありません。
都農町は、文字通り「農の都」と書き、農業が盛んな地域です。
今は地域おこし協力隊として農家から出る廃棄野菜や規格外野菜を有効活用できないか可能性を探っている段階です。
編集後記
座談会のお話を聞いていて印象的だったのは、全員が「訪れた地域との関わりが今でも続いている」ということ。みなさんタイミートラベルで訪れた地域が自身にとって特別な存在になっていることが垣間見える時間となりました。
参加目的はみなさん異なりましたが、タイミートラベルを通して自分にあった地域との関わり方を見つけられているようでした。移住だけをゴールとするのではなく、地方とのグラデーションのある関わり方を持つ人が増えることで、より地域が元気に面白くなっていく。そんな予感がしました。
今回の記事を読んでタイミートラベルが気になったと言う方は、ぜひタイミートラベル公式LINEをお友だち登録して、あなたの「第二の故郷」となりうる場所を探してみてくださいね。
▼タイミートラベル公式サイト
- タイミーラボ編集部
タイミーラボは、株式会社タイミーによるオウンドメディアです。
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