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株式会社タイミーの事業は、スキマバイトサービス「タイミー」だけではありません。関係人口の創出を通じた地方創生を目指す、「タイミートラベル」も運営しています。
●タイミートラベルとは?
タイミートラベルは、地方の関係人口※創出を目的としたサービスです。 地方での仕事や生活を体験したい人と、人手やスキルが欲しい地方の事業者をマッチングします。働き手は、地方での仕事や生活の体験を通じて、滞在費を賄いながら第二の故郷を見つけることができます。事業者は、繁忙期の人手不足やスキルを要する課題を解決することができます。
※関係人口とは地域活性化において注目されている、地域と多様に関わる人々を指す言葉
今回編集部は、熊本県苓北町にある水産加工会社「浜崎水産」でトラベル体験をした中村さん、そして苓北町で本プロジェクトを担当している浦田さん、河原さんに取材をしました。
お話を通して、本事業の意義や、タイミーが地方自治体や地方銀行と協業して叶えたい未来をご紹介します。
浜崎水産でのトラベル参加者、中村さんの1日をレポート
今回神奈川県から参加した中村さんは、ホテルに滞在しながら約1週間、浜崎水産で勤務しています。下はトラベル体験のタイムスケジュールイメージ。最終日は、苓北町名物のイルカウォッチングや、名産品である内田皿山焼の窯元見学など、観光を楽しむプランです。
※取材時、台風直撃により最終日の観光はキャンセルとなりました
編集部が現場に着くと、浜崎水産のご担当者様がお出迎え。「本当は朝9:00からの勤務のところを、本人たっての希望で7:00から勤務してもらっているんです。非常に熱心な方です。」休憩時間になり、海から戻ってきた中村さんは、すっかり他の従業員の方々に馴染んでいるようでした。
浜崎水産は、 天草天領岩かきというブランド牡蠣や、地域名産のヒオウギ貝の養殖業を営む水産業者。タイミートラベルの受け入れ事業者としてご協力いただいています。
休憩時間が終わると、私たちも船に乗せてもらい海上の作業場へ。
写真は、参加者の中村さん。船上で手袋や長靴を装備して身支度をしながら作業場へと向かいます。
作業場に着くと、さっそく業務開始です。中村さんが任されていたのは、養殖中の牡蠣の殻の掃除の作業。牡蠣を大きく育てるため、網から出しては、金属製の道具で殻に付着しているフジツボや汚れを取り除き、網の中に綺麗に並べ入れ、戻していきます。
トラベル体験開始から数日経っていたからか、手際の良さを発揮する中村さん。
専用の機械に通されて洗浄された牡蠣入りの網を、作業場に運び上げる作業も担当されていました。
掃除を終えた牡蠣は、専用の網に入れて海の中に戻します。
海の中で数年かけて養殖された牡蠣は、かなりの大きさに。苓北町を代表する名産品となっています。7時間程度の海上での作業を終え、業務終了です。
参加者インタビュー ——寿司職人になる夢と、地方移住への夢
参加者である中村さんに、参加のきっかけや目的をお伺いしました。
——今回参加しようと思ったきっかけを教えてください。
参加者・中村さん:
先日会社を辞めまして、数ヶ月後に寿司職人になるべく専門の調理学校に通い始めるんです。入学までの空いた時間を有効活用するべく、将来的に考えている、「地方への移住」の下準備のためにタイミートラベルに登録しました。
たくさんの案件の中から、将来寿司職人になった時に役立てればと、今回の浜崎水産さんでの牡蠣の水揚げ作業の仕事を選びました。
——寿司職人になる夢、ですか。なぜ前職を辞め、寿司職人を目指そうと思ったのでしょうか?
コロナに罹って2週間程会社を休んだ時に、自分の今後を見つめ直し、やりたいことをやらなきゃ勿体ないと、思い切って決断したんです。20代のうちはがむしゃらに働いていましたが、30代にさしかかり、本当に定年までこの会社にいて良いのか?と自問自答するようになっていました。
もともと、人に喜んでもらえることを自分自身の喜びだと感じるタイプでして、自分の作ったもので喜んでもらいたいと、飲食店を開業することが夢でした。その中でも寿司職人であれば、カウンター越しに直にお客さんの反応を得られるだろうと思い、転身を決めたんです。
——もともと移住にも興味があったんですね!
自分が長崎の出身というのもあって、ちょっと車で走れば大きな商業施設があるくらいの規模の土地に移住することに憧れているんです。前職の時は、地方に出張するたびに、「こんな町に移住するのもいいな」と夢を膨らませていました。
——苓北町でのトラベル体験に参加してみていかがでしたか?
めちゃくちゃ楽しかったです。作業自体はハードでしたが、お客さんの元に届けられるところを想像すると嬉しくなりましたし、毎日触っているので牡蠣にも愛着が湧きましたね。
浜崎水産のみなさんや町役場のみなさんと食事をした際には、なんとか町を盛り上げたいと、それぞれが色々な案を出していて、そんな熱い思いに触れられてよかったなと思っています。もしこの町で事業を始めるとしたら、手厚くサポートしてくれそうだなという印象も受けました。
——今回の体験は、今後の生活にどう活きそうですか?
今後、無事に自分の店を持てるとなったら、なるべく生産者の方に会いに行って話を聞いた上で、寿司をお客さんに提供したいと思うようになりました。
最初は町の名前を全く知らないようなところから始まりましたが、実家も近いですし、将来的には移住先の候補地として検討できればと思っています。
「タイミートラベルは”今後につながる”取り組みでした」
次に編集部は、苓北町役場に向かい、本事業を担当していただいている浦田さん、川原さんを訪ねました。参加者である中村さんの満足度はかなり高かったようですが、移住促進、関係人口創出を狙う苓北町役場のお二人は、どのように捉えているのでしょうか。
——現在の地域の雇用状況に、どのような課題を持っていらっしゃいますか?
川原さん:
少子高齢化による人口減少が叫ばれてやまない今、地方自治体にとってそれは喫緊の課題です。苓北町も例外ではなく、50年後には人口が今の半分の3000人にまで減ると試算されています。町を出ていった若者が帰ってこない現状からも、働く場所と住む場所の確保をして、受け入れる環境をどうにかしなければいけないという課題感があります。
—— その中で、タイミートラベルに注目していただいたのはなぜでしょうか?
浦田さん:
タイミートラベルの観光と就業、交流をパッケージ化している点に興味を持ったんです。コロナ禍になって、移住や多拠点居住に関心が集まるようになりました。この流れを汲み、移住や多拠点居住を推進するためにも、まずは町のことを認知してもらう必要があります。町の素晴らしい自然や文化を知ってもらえる観光的接点と、就業・交流というその土地に住む人たちのことを知ってもらえるような接点を兼ね備えているタイミートラベルは、その手段として最適だと考えました。
苓北町役場 企画政策課 浦田さん
—— 町内の複数の事業者で実証をしていただいていますが、これまでのご感想をお願いします。
浦田さん:
正直に言うと、最初は苓北町でトラベル体験をしたい!と参加者が集まってくるイメージが無かったんです。まずその点から、良い意味で裏切られました。
単に就労体験目的ではなく、中村さんのように「寿司職人になる/移住に興味がある」といった目的をお持ちの方々に参加していただけて嬉しかったですね。仮に移住に至らなかったとしても、今後お店を開いた時に苓北町の海産物を取り扱ってくれるかもしれないじゃないですか。そうした今後につながる予感のする施策となって良かったです。
——それもある意味で関係人口ですもんね
川原さん:
中村さんの前に、果樹園で大学生二人の受け入れをしたんですがそちらも印象的でした。大学で農業系のサークルに入っていて、これから農業ビジネスを学ぼうとしている方々だったんですが、「野菜に対する農家さんの愛情や思い入れを感じました」というコメントをくれたんです。しかも終了後に、その果樹園の作物詰め合わせセットを取り寄せて購入してくれたみたいで。
もちろん、最終的に移住してくれればベストですが、いきなりでは難しいので。苓北町への深い理解と共感を、作物を買うというアクションで示してくれたのだと思います。
苓北町役場 農林水産課 川原さん
——本事業の今後の展望を教えてください。
浦田さん:
今回のタイミートラベルとの協業で一定の手応えを感じたので、今後さらに強化していくためにも、取り組みの拠点となるようなコーディネーターの方を迎え入れたいですね。遠方からいらっしゃった参加者の方と、地域の人たちを繋ぐような架け橋の役割をしてもらい、今後も持続的にこの取り組みを実施できるような体制作りを検討していきたいです。
自治体、地方銀行を巻き込んで、人を呼び込む
さらに、タイミートラベルが苓北町と取り組みを始めるきっかけを繋げてくれた、肥銀オフィスビジネス株式会社の平田さんにもお話をお伺いしました。
平田さんは、「今回のタイミートラベルは、参加者の方もワクワクしているし、受け入れ事業者も『若い人が来てくれて、新鮮な気持ちで仕事ができる』と言ってくれています。地方銀行としても、地域のお客様のお困りごとに耳を傾け、あらゆる人材確保の方法を一緒に考えていきたいです。」と語ります。
あらゆる地方自治体がかかえる、人の呼び込みに対する課題。タイミートラベルは、観光と就業、そして交流の3つの軸によって、その地域のファンを増やすことに貢献します。
- タイミーラボ編集部
タイミーラボは、株式会社タイミーによるオウンドメディアです。
https://lab.timee.co.jp/