
目次
就職活動や転職の際に履歴書を作成する方の中には、「印鑑は押すべきなのか」「どんな印鑑を選べばよいのか」と悩む人も多いでしょう。初めて履歴書を作成する10代や20代の若年層にとっては、正しい知識がないと不安に感じるものです。この記事では、履歴書における印鑑の必要性や適切な印鑑の選び方、きれいに押すコツなどについて詳しく解説します。
履歴書へのはんこは必要?現代の考え方と基準
履歴書への押印は、基本的には必要ないと考えられています。これは1997年に定められた厚生労働省の「押印見直しガイドライン」によるものです。
この「押印見直しガイドライン」では、「押印を求める必要性や実質的意義が乏しく、押印を廃止しても支障のないものは廃止し、記名のみでよいこととする」という基本方針が示されました。具体例として「履歴書、住所変更届、廃業届等で、単に事実・状況を把握することのみを目的としているもの」が挙げられており、履歴書は押印不要の対象とされたのです。
こうした流れを受け、現在では押印欄のない履歴書フォーマットも多く流通しています。就職・転職活動において、印鑑の有無によって選考結果が左右されることも基本的にありません。書類選考の際に重視されるのは、あくまでも記載内容や志望動機、経歴などであり、押印の有無ではないからです。
このガイドラインをきっかけに、社会全体でも「脱はんこ」の流れが広がっています。とくに近年はデジタル化の推進とともに、さまざまな場面で押印の必要性が見直されるようになりました。履歴書についても、電子履歴書の普及にともない、押印の重要性は薄れてきています。
参考:厚生労働省|押印見直しガイドライン(平成九年七月三日)(事務次官等会議申合せ)
履歴書へのはんこが必要となるケース
基本的に履歴書への押印は不要とされていますが、状況によっては必要になる場合もあります。ここでは、履歴書にはんこが必要となる具体的なケースについて解説します。
企業から指示がある場合
応募先の企業から「履歴書には必ず押印してください」と指示がある場合は、その指示に従って押印する必要があります。たとえ手元にある履歴書に押印欄がなくても、企業からの指示があれば押印しなければなりません。
押印欄のない履歴書に印鑑を押す場合は、氏名の右横に押すのが一般的です。その際、氏名と印鑑が重ならないように注意しましょう。スペースを確保するために、氏名を記入する際は右側に余裕を持たせておくとよいでしょう。
近年では、履歴書をデジタルデータで提出する機会も増えていますが、その場合でも企業から押印の指示があれば対応が必要です。印刷して押印した後でスキャンする、電子印鑑を作成して押印するなど、企業の指示通りに対応することが大切になります。
なお、電子印鑑は、インターネット上のフリーソフトやツールを使って作成できます。
履歴書に印鑑欄がある場合
市販の履歴書やダウンロードできるフォーマットのなかには、氏名欄の横に押印欄が設けられているものがあります。このような履歴書を使用する場合は、企業からの指示がなくても押印するのが基本です。
押印欄があるにもかかわらず印鑑を押さないと、書類不備とみなされるリスクがあります。履歴書は応募者の第一印象を左右する重要な書類であるため、空欄をなくし、すべての欄を埋めて提出することが原則です。
押印の際は、欄の中央に押すよう心がけると、バランスのよい印象を与えることができるでしょう。
なお、履歴書を選ぶ段階で悩むようであれば、最初から押印欄のないタイプを選ぶことで押印の手間を省くこともできます。ただし、企業から押印の指示があった場合は、そちらの指示に従う必要があることを忘れないでください。
履歴書に適した印鑑の選び方
履歴書に押印する際は、適切な印鑑を選ぶことが大切です。ここでは、履歴書に適した印鑑の選び方について詳しく説明します。
なお、履歴書を書く際には印鑑だけでなく、ペンの選び方も重要です。詳しくは以下の記事をご参照ください。

認印を選ぶ理由と適切なサイズ
履歴書には「認印」を使用するのが一般的です。認印とは、印鑑登録をしていない、日常的に使用する印鑑のことを指し、文具店や100円ショップなどで手軽に購入できます。
認印として適切なサイズは、直径10.5mmから12mm程度が理想的です。このサイズであれば、履歴書の文字と印影のバランスがとりやすく、押印欄がある場合も収まりがよくなります。逆に、あまりに大きな印鑑は、押印欄からはみ出したりする恐れがあるため避けるべきでしょう。
印影の書体は、ひと目で読める古印体、隷書体、楷書体、行書体などがおすすめです。これらの書体は文字がはっきりと見え、「誰の印鑑であるか」が一目でわかるという特徴があります。就職活動や転職活動では、採用担当者に余計な疑問を抱かせないよう、明確で読みやすい書体を選ぶことが大切です。
避けるべき印鑑(実印・銀行印・シャチハタ)
履歴書に使用すべきでない印鑑としては、実印、銀行印、シャチハタなどが挙げられます。
実印は市区町村役場に登録した印鑑で、重要な契約や公的な手続きに使用するものです。実印は不動産売買などのより重要な書類に使用するため、履歴書に押印すると大げさな印象を与え、場合によっては「常識がない」と思われる可能性もあります。
銀行印も同様に、金融機関での取引に使用する重要な印鑑です。通常、銀行印は預金の引き出しなど、お金に関わる手続きに使用するものであり、履歴書への使用は避けるべきでしょう。実印や銀行印は偽造防止のため複雑な書体になっていることが多く、多用することで印影が流出するリスクも考慮する必要があります。
シャチハタなどの浸透印も履歴書には不向きです。シャチハタは内蔵されたインクで押印するタイプの印鑑ですが、時間の経過とともにインクが劣化したり、書類が濡れるとにじんだりする可能性があります。また、シャチハタはゴム製の印面を使用しているため、押し付ける力加減によって印影が変わることもあり、本人確認の手段としては信頼性に欠けます。
履歴書は応募者の第一印象を左右する重要な書類であるため、適切な印鑑を選ぶことが大切です。
印影をきれいに残すための押印テクニック
履歴書に印鑑を押す際は、きれいな印影を残すことが重要です。かすれやにじみがあると、書類全体の印象が悪くなってしまいます。ここでは、履歴書にきれいな印影を残すためのテクニックを紹介します。
押印前の準備と確認事項
まず、押印前にいくつかの準備と確認をすることが大切です。これらの事前チェックを怠ると、せっかく作成した履歴書が台無しになってしまう可能性があります。
印鑑の印字面のチェックと汚れの確認
印字面に古い朱肉や埃が付着していると、きれいな印影を得ることができません。使用前にティッシュや柔らかい布で優しく拭き取り、印字面をきれいな状態にしておきましょう。
押印する環境や場所の用意
平らで安定した場所を選び、印鑑を押す際に滑ったり傾いたりしないようにしましょう。照明が十分な場所で作業することも大切です。暗い場所では印影の出来栄えを確認しづらく、失敗のリスクが高まります。
朱肉の品質確認
長期間使用していない朱肉は乾燥している可能性があります。その場合、印影がかすれやすくなるため、新しい朱肉を用意するか、既存の朱肉の表面を軽く押して状態を確認するとよいでしょう。印鑑ケースに付属している簡易朱肉は品質が安定しないため、できれば専用の朱肉を使用することをおすすめします。
本番の履歴書に押印する前に、別の紙で練習する
練習用紙で印影の出方や力加減を確認しておくことで、本番での失敗を防ぐことができます。初めて印鑑を使う方は、何度か練習してから履歴書に押印するようにしましょう。
正しい押印の手順とコツ
履歴書へは、正しい方法で押印することで、印影のかすれやにじみを防ぎ、美しい仕上がりになります。
まずは、平らな場所に捺印マットを敷きましょう。専用の捺印マットがない場合は、厚めのノートや雑誌などを代用することも可能です。マットを使用することで、印鑑と紙の接触が均一になり、印影全体がきれいに出やすくなります。
次に、印鑑を朱肉につける際は、強く押し付けるのではなく、軽くトントンと叩くようにして朱肉をつけるのがコツです。強く押しつけると朱肉がつきすぎてにじみの原因になるため、適度な量をつけることが重要です。
印鑑を紙に押す際は、印鑑の上下を確認し、文字が正しい向きになるようにしましょう。印鑑を持つ手の親指と人差し指で印鑑の上部を持ち、中指で底を支えるようにするとブレにくくなります。
押印する際のコツとして、小さく「の」の字を書くように印鑑を動かす方法があります。これにより、印影全体が均一につき、かすれや欠けを防ぐことができます。ただし、大きく動かしすぎるとぼやけの原因になるため、わずかに動かす程度に留めましょう。
適切な力加減も重要です。強すぎると紙が凹んだり朱肉がにじんだりする原因になります。本番前に別紙で何度か試しておくとよいでしょう。
よくある押し方の失敗と対処法
押印を失敗すると履歴書の印象が損なわれる可能性があります。よくある失敗パターンは以下のとおりです。
逆さまに押してしまう
一定以上斜めに押してしまう
かすれてしまう
欠けてしまう
二重に押してしまう
滲んでしまう
はみ出してしまう
押印に失敗した場合の対処法としては、基本的に履歴書を書き直すことが原則です。履歴書では修正液や修正テープの使用は避け、二重線を引いて訂正印を押す方法もマナー違反とされています。失敗したと感じたら、新しい履歴書に書き直すことが大切です。
失敗を防ぐための事前対策としては、押印の練習を十分に行うことです。また、履歴書記入の最初のステップとして押印する方法もあります。この方法なら、押印に失敗した場合でも記入時間を無駄にせずに済みます。さらに、押印専用のマットや厚手の下敷きを用意する、朱肉の状態を事前にチェックする、照明が十分な場所で作業するといった対策も効果的です。
まとめ
履歴書における印鑑の扱いについて、必要性から選び方、押印テクニックまで詳しく解説しました。「押印見直しガイドライン」により、基本的には履歴書への押印は不要となりましたが、企業からの指示や押印欄がある場合は必ず押印しましょう。印鑑選びでは、10.5〜12mm程度の認印が適しており、実印・銀行印・シャチハタは避けるべきです。
美しい印影を残すためには、印鑑の印字面確認、捺印マットの使用、朱肉の適切な量、「の」の字を描くように押す技術など、いくつかのポイントを押さえることが重要です。また、押印に失敗した場合は修正液などを使わず、書き直すことを基本としましょう。
履歴書は応募者の第一印象を左右する重要な書類です。この記事で紹介した知識を活かし、就職活動や転職活動を成功に導きましょう。