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介護の仕事が楽しすぎる。でもずっと務めるのはやっぱりダメだ。私は深入りしすぎる。感情移入しすぎる。それが介護に向いていると思っていたが逆だ。人に深入りしすぎると自分を見失う。身も心もボロボロになった日を思い出せと言い聞かせる。タイミーでいろんなところでその場限りの介護士が一番だ。
でもこれ(介護士の資格)が活かせるのが嬉しい。社会の役に少しでも立っている気がする。私にとって宝物のような資格だ。
ある日、X(旧Twitter)上にこう投稿したのは、シンガーソングライターでラジオパーソナリティのmi-lnさん(@milnln)。音楽活動と並行してハンドメイドアクセサリーの製作を行うなど、表現者として精力的に活動されています。そんなmi-lnさんのもう一つの顔が、「介護士」という職業。
mi-lnさんが、「自分は介護に向いていない」と吐露しつつも、「また社会の役に立てるようになった」と話すのはなぜなのか?そこに至るまでの経緯や葛藤、気持ちの変化に迫ります。
祖母の介護を通じて、資格取得を志した過去
—— まずは、介護士を志したきっかけを教えてください。
きっかけは、祖母の介護でした。今から14年ほど前に祖母が仮性認知症を発症し、手や足をうまく動かせず、介助が必要な状態になったんです。自分なりに介助をしていたんですが、なかなか上手くいかず、祖母に対してより良い関わり方をしたいと思い始めたことがきっかけです。
—— 最初は身近な存在に対して、より良い介護をしたいという思いからだったんですね。
はい。でも初任者研修の資格勉強をするうちに、介護への理解が深まり、介護を仕事にしたいという思いが芽生えてきて。資格取得を待たずに特別養護老人ホームに就職しました。認知機能や身体機能が著しく低下していて、自分の力では立ったり寝返りを打ったりできない方の食事や排泄の介助が、その業務範囲です。
当時はまだ子どもが小さかったので1日6時間のパートタイムでしたが、月曜日から金曜日まで、毎日勤務していました。子育ての合間を縫って勉強を続け、就職から4年後には、介護福祉士という国家資格も取得したんです。
最善を尽くそうするほど、「正しい介護」がわからなくなる自問自答の日々
—— 子育てとお仕事を両立させながら国家資格まで取得されるなんて、本当にすごいですね。そこまで熱意を持って続けられるほどの、介護士の仕事のやりがいはどんな点なのでしょうか?
私自身が介護をする上で気をつけていることとして、「手取り足取り介助をしすぎない」ということがあります。介助を最小限に抑えることで、利用者さんが「自分の力でできた!」と達成感を得られ、自信につながることがあるんです。その表情を見ると、やりがいはもちろん、自分のやり方で良かったんだなあと、私自身も励まされますね。
—— ただ助けるのでは無く、その方自身の力を引き出すことに、介護の意義があるというお考えなんですね。
そうですね。一方で、自分の介護への向き合い方が、本当に正しいのかと自問自答することもあります。
96歳のご利用者の方の介護を担当している時、「最後に花火を見たい」とお願いされたことがあったんです。望みを叶えるべく、屋上にお連れして花火を見ていただきました。すごく喜んでくださって嬉しかったんですが、一方で、明らかな衰えを感じさせてしまったことで「もう自分はダメなのかも」と思わせてしまったかも、と反省もして。
その方にとっての最善を考えた上での介助だとしても、別の見方をすればそうじゃないかもしれない。良い介護とは何かを考えれば考えるほど、反省が深まり、思い詰めるようになってしまいました。それに、チームで介護をする中で、どうしても他の介護士と意見や価値観が合わないことも多々出てきてしまって。
—— 介護観の隔たりによる衝突ですか。
コロナ禍で人手不足が深刻化し、どうしても現場がピリついてしまう時期があったんです。余裕がなくなったせいか、同僚が利用者さんに辛くあたっている場面に遭遇することもありました。良い悪いをハッキリさせたい私の性格もあって、同僚と衝突することも増えていったんです。今振り返れば、意見の押し付けになっていた部分もあったかもしれないのですが......。
同時期に娘の学校の休校が決まって、家にひとりぼっちにさせたくないという気持ちもあり、仕事を辞める決断をしました。
—— そうした背景があっての、SNSの「私は(介護に)深入りしすぎる。感情移入しすぎる」という発言だったんですね。
私は昔から「人」が好きで、必要とされればできるだけ力になりたい性格なんです。その思いが強すぎるがゆえ、一人の人に伴走する過程でその人の痛みを重く受け止めすぎてしまうこともありました。
コロナ禍が落ち着き、仕事を再開しようとした時も、精神的な負荷を思うと介護士としての復帰は考えられませんでした。そんな時に知人にタイミーを教えてもらったんです。
「タイミーは、自分のペースで社会に貢献できる働き方でした」
—— タイミーではどのような仕事をしていますか?
利用開始当初は、物流倉庫での梱包作業や小売店での品出し作業をしていました。育児やミュージシャン活動の合間に使えて良いな、と繰り返し使っていたら、ある時介護施設の仕事を見つけたんです。
雰囲気が合わなければその後働きに行かなくても良い。介護観の違いに悩むこともないし、短時間だから利用者さんに寄り添いすぎて精神的な負荷を追うこともない。どこかで「もう一度介護の現場に携わりたい」という思いがあった私には、ぴったりの働き方だと思い、その仕事にマッチングしました。
現場では、利用者さんの安全を確保するための「見守り」業務から任せていただくことが多いですね。スタッフの方が私の仕事ぶりを見て、トイレ介助などの介護経験が必要な業務を任せてもらうこともあり、楽しく働かせてもらっています。
—— タイミーを通じて介護施設で働く中で、印象に残っている出来事はありますか?
全盲の利用者さんのレクリエーションを見守る場面で、その方に、「あなたも今、座れてる? 立ってないで一緒に座りましょう」などと、すごく気遣っていただいたんです。その優しさは、その方のこれまでの長い人生のなかで形作られたものなのだなあと、しみじみと感じました。
介護士の仕事のやりがいの一つに、ご利用者さんが歩んできた人生を追体験させてもらえるような瞬間があるんですよ。そうした人生の片鱗に触れられる機会は、タイミーでの一期一会の出会いの中でもたくさん経験させてもらっています。
—— ご自身のペースで介護士の仕事を続けられているとのことで、非常に嬉しいです。
同じ施設で同じ人に向き合い続けることはまだまだ精神的に難しいのですが、一方で国家資格を頂いている身として、少しでも社会に貢献したいという思いも強くて。一期一会の出会いを大切にしながら介護の現場に携われるタイミーは、自分にはもってこいの、本当にありがたい働き方だと思っています。
- タイミーラボ編集部
タイミーラボは、株式会社タイミーによるオウンドメディアです。
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